タランティーノのハリウッド愛にあふれた作品でレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットが初共演!

リック(レオナルド・ディカプリオ)とクリフ(ブラッド・ピット)

 ちょうど今から50年前の1969年8月9日、ハリウッドである悲劇が起きました。当時、『ローズマリーの赤ちゃん』で人気監督となったロマン・ポランスキーの妻で新進女優のシャロン・テートが、ハリウッドの自宅で狂信的カルト集団の指導者チャールズ・マンソンの信奉者たちによって惨殺されたのです。事件当時、彼女は26歳で妊娠8か月でした…。

 クエンティン・タランティーノ監督の新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は、この「シャロン・テート事件」を題材にしながら、いかにも彼らしい独自の視点と破天荒な構成で作り上げた映画なのです。主演はレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピット。どちらもタランティーノ監督とは組んだことがありますが、共演するのは初めてのことです。

 舞台は1969年2月のハリウッド。リック・ダルトン(ディカプリオ)は50年代にTV西部劇の人気スターでしたが、映画界への転身に失敗。今はTVや映画の悪役などで細々と生き延びている落ち目の俳優です。クリフ・ブース(ピット)はリックの専属スタントマンとしてずっと組んできた元戦争の英雄。今でもリックとは友情で結ばれ、彼の世話をするのが主な仕事になっています。そんなリックの屋敷の隣に引っ越してきたのが、ロマン・ポランスキー監督とシャロン・テート(マーゴット・ロビー)夫妻でした。

マーゴット・ロビー扮するシャロン・テート
マーゴット・ロビー扮するシャロン・テート

 時代の流れに取り残されそうになっている自分に焦り、情緒不安定になっているリックは、イタリアでマカロニ・ウエスタンに出ないかというオファーに心が揺れています。一方のクリフはどんな状況になっても自分らしさを失わず、飄々と生きているのです。この二人の日常が、徹底的に再現された当時のハリウッドの風俗の中に描き出されていきます。やがてクリフはヒッピーの少女を通してチャールズ・マンソンの“ファミリー”と因縁を抱えてしまい、そして運命の8月9日が…。

 主人公の二人は架空の人物ですが、そこにポランスキー夫妻やスティーヴ・マックィーン、ブルース・リーをはじめとする実在の映画人を登場させ、まさに虚実皮膜の物語を展開させていきます。そこに注ぎ込まれているのは、あふれんばかりの当時のハリウッドへの愛情。美術や小道具、ラジオのジングルなどの細部にまでこだわり、観客を69年のハリウッドに誘っていくのです。視覚効果デザインには、あの『スター・ウォーズ』第1作も手がけたジョン・ダイクストラを起用。約2時間40分の長尺にもかかわらず、前半はほとんど事件らしい事件は起きず、ひたすらリック、クリフ、シャロンの日常生活を追っていくのですが、もちろんタランティーノ映画ですから、クライマックスにはバイオレンスとユーモアもたっぷり。映画ファンで、当時の世相に詳しければ詳しいほど楽しめる映画なので、かなり観る人を選ぶ作品なのは間違いありませんし、中には「こういう展開は許せない」と怒る人もいるでしょう。しかし、それこそがタランティーノ作品の持ち味。これは69年当時、LAのアルハンブラに住んでいたタランティーノ少年がその頃に見た「夢」を具現化したものなのですから。

 出演者は他にアル・パチーノ、エミール・ハーシュ、ダコタ・ファニング、ルーク・ペリー、ブルース・ダーン、ダミアン・ルイス、カート・ラッセル、ゾーイ・ベル、マイケル・マドセンら。

(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は8月30日から公開)

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント