張り巡らされた伏線をあなたは見破れるか? 鬼才パスカル・ロジェの驚愕ホラー『ゴーストランドの惨劇』

 ミステリー小説の世界には「叙述トリック」というものが存在します。通常のトリックが「犯人が捜査陣(あるいは社会全体)に対して仕掛けるもの」であるのに対して、叙述トリックは「作者が読者に対して仕掛けるもの」。この映画『ゴーストランドの惨劇』は、それに近いものなのです。

 監督はフランス出身のパスカル・ロジェ。2008年のホラー『マーターズ』で観客にトラウマを与えるような衝撃描写で話題を呼び、若き鬼才として注目を浴びました。本作は12年の『トールマン』以来6年ぶりの新作になります。

 叙述トリック系の作品は映像化が困難なものが多いのですが、『トールマン』でもそれに近いことに挑戦したロジェ監督は、本作でさらに完成度を上げています。

 あまり多くを語るとネタバレになるので、冒頭部分のみをご紹介。

 人里離れた家を相続し、そこに移り住んだシングルマザーのポリーン(ミレーヌ・ファルメール)と双子の10代の娘。姉のヴェラ(テイラー・ヒックソン)は奔放で現代的、妹のベス(エミリア・ジョーンズ)はラヴクラフトを崇拝する内向的な少女と、性格は正反対でした。新居に到着したその夜に惨劇が一家を襲います。2人の暴漢が家に押し入ってきたのです。襲われる娘たちを守ろうと母は必死に反撃。姉妹の目の前で暴漢をメッタ刺しにします。……そんな悪夢のような夜から16年。ベス(クリスタル・リード)はホラー小説家として成功し、夫や子供と幸福な暮しをしていましたが、姉のヴェラ(アナスタシア・フィリップス)は精神を病み、今も母とあの家に暮らし、地下室に閉じこもったまま。そんなある日、ベスは姉からの電話を受け、長らく足が遠のいていた実家を訪れるのですが…。

 ありきたりの「館もの」を想像していると、驚かされること必至。全編に伏線が張り巡らされ、映像の迷宮に観客を招く仕掛けが施されています。しかもロジェ監督のすごいところは、真相が判明した後も、ショック描写の連続で姉妹を恐怖と絶望のどん底に叩き込んでいくことなのです。まさに悪夢のような地獄めぐりの展開で、このあたりは女性二人を徹底的にいたぶった『マーターズ』を彷彿させる部分。

 騙される快感を味わい、観終わった後にもう一度確認のために観たくなるホラー映画の快作です。

(『ゴーストランドの惨劇』は8月9日から公開)

配給:アルバトロス・フィルム

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