何度も殺されてはその日の朝に戻される、死の無限ループから抜け出せるのか?『ハッピー・デス・デイ』

 誕生日の夜に、マスクを被った謎の人物にナイフで刺し殺された女子大生ツリー(ジェシカ・ロース)。しかし、目が覚めると当日の朝。なぜか同じ一日を繰り返し、再び殺されてしまいます。時の無限ループに閉じ込められてしまった彼女は、なんとか殺されずに翌日を迎えようとしますが、家に閉じこもってみても、遠くに逃げようとしても、結局は殺されてしまうのでした。この悪夢のような誕生日から逃げ出すことはできるのか…。

新時代のスクリーム・クイーン(?)ツリー役のジェシカ・ロース
新時代のスクリーム・クイーン(?)ツリー役のジェシカ・ロース

 同じ一日を繰り返す、という映画にはラブコメディの『恋はデジャ・ブ』(93)やSF戦争アクションの『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14)などがありましたが、それをホラー映画に取りこんだのが新機軸。コミックブック・ライターのスコット・ロブデルの脚本を手にしたクリストファー・ランドン監督が、『パラノーマル・アクティビティ』シリーズで組んだ製作者ジェイソン・ブラムに話を持ちかけたことで映画化が進みました。

 そのシリーズや『ゲット・アウト』『インシディアス』シリーズ、『パージ』シリーズなどでホラー/スリラーの世界に旋風を巻き起こしているブラムは、若くて才能ある人からの企画を柔軟に受け止め、大物スターを使わず大がかりなセットは組まないというコンパクトな映画作りで着実にヒット作を作り続けてきました。低予算映画でも決して安っぽい作りにしないところが一本筋の通ったところ。今作も無名の若手俳優ばかりを起用し、舞台も大学の学生寮とその周辺にとどめています。

ツリーとカーターは協力して事態を打開しようとするが…
ツリーとカーターは協力して事態を打開しようとするが…

 本作の脚本が特に優れているのは主人公の造形です。ヒロインであるツリーは、はっきり言って“ビッチ”。誕生日の朝に目を覚ますのは、見知らぬ男子学生カーター(イズラエル・ブルサード)のベッドで、前夜のことは酔いつぶれて覚えていない始末。女子寮では“意識高い系”のグループに属し、一般生徒を見下している上、妻のいる大学教授とは不倫中。ルームメイトが作ってくれたバースデー・ケーキも即ゴミ箱行き…。普通のホラー映画ならば、真っ先に殺されるタイプなのです(まあ、実際にすぐ殺されちゃっていますが…)。

 そんな彼女が、何度も殺され、同じ一日を繰り返すうちに、どんどん変わっていきます。いろいろな角度から同じ現実を見るにつれて、それまで知らなかった真実に気付き、成長していくのです。何度も共闘するうちにカーターとの絆も生まれ、自分が今までどんなにバカだったか思い知らされる…。そう、スラッシャーホラーとして始まった物語は、なんとさわやかな青春学園ラブストーリーに変貌していくのです。最初は嫌~な女だったのに、どんどん魅力的になっていくツリーの姿には感動さえしちゃいます。

殺人鬼に追われるサスペンス場面は緊迫感あふれるもの
殺人鬼に追われるサスペンス場面は緊迫感あふれるもの

 もちろん「誰が私を殺したのか?」という問題はしっかり残っているので、サスペンス・ミステリーとしての見せ場もたっぷり。伏線もちゃんと張られていて、事件の意外な真相が判明するクライマックスまで目が離せません。これだけいろいろ詰め込まれていて(途中にはかなりコミカルな場面もある)96分と短くタイトにまとめているのですから、全米で大ヒットしたのも当然でしょう。

 この映画のサプライズ・ヒット(全米では公開週のナンバーワン・ヒットに躍り出た!)により、続編の『ハッピー・デス・デイ 2U』が同じスタッフ・キャストで製作されました。こちらはパラレルワールド・テーマも含み、よりSFコメディーに寄った作品になっていて、まさかの感動的な展開も…。続編は7月12日から日本公開されます。

(『ハッピー・デス・デイ』は6月28日から公開)

配給:東宝東和

(C)Universal Pictures