S・マックィーンの73年の名作『パピヨン』がチャーリー・ハナム&ラミ・マレック共演で再映画化

 フランスの作家アンリ・シャリエールの自伝的小説『パピヨン』は1973年にスティーヴ・マックィーン主演で映画化され、大ヒットを記録しました。今回、45年ぶりの再映画化に挑んだのはノルウェーの新鋭マイケル・ノア―監督。脚本は『プリズナーズ』のアーロン・グジコウスキが手がけていますが、73年版を執筆したダルトン・トランボ(『ローマの休日』)に捧げられた作品になっていて、オリジナルへの敬意を忘れてはいません。

 主人公パピヨンに扮するのは『パシフィック・リム』のチャーリー・ハナム。73年版でダスティン・ホフマンが演じたドガ役には『ボヘミアン・ラプソディ』でアカデミー主演男優賞を獲得したラミ・マレックが扮しています。73年版にはなかった、パピヨン逮捕前のパリでのエピソードや、脱獄後の彼の姿も描かれており、パリ時代のパピヨンのガールフレンド役は、U2のボノの娘で、『フッド:ザ・ビギニング』(10月公開)でヒロインに抜擢されたイヴ・ヒューソンが演じています。

 1931年、胸に蝶の刺青を入れていることからパピヨン(蝶)と呼ばれる金庫破りのアンリ・シャリエール(ハナム)は、暗黒街のボスの怒りを買い、殺人の濡れ衣を着せられてしまいます。終身刑となった彼が収監されたのは、仏領ギアナの悪名高い流刑地。囚人は刑期が終わった後も植民地の労働力として死ぬまで南米に留まることを強いられるのです。パピヨンは脱獄を決意します。

 それには金が必要です。パピヨンは大金を貯めこんでいるという噂のために他の囚人から命を狙われているルイ・ドガ(マレック)に目を付け、「俺が命を守ってやるから脱獄計画に手を貸してくれ」と持ちかけました。こうして二人の長い長い自由への闘いが始まったのです…。

流刑地からの脱獄を試みるパピヨン
流刑地からの脱獄を試みるパピヨン

 何度も脱獄を試みては独房生活を強いられるパピヨン。長い時は5年にも及び、彼はどんどん衰弱していきます。マックィーンが演じたパピヨンは、決して挫けない不屈の男という印象でしたが、ハナムは弱さや迷いも前面に出しています。マックィーンの場合は演じる彼自身のイメージと重なる部分も多く、それゆえに男の魅力がほとばしっていたのですが、あまりに人間離れしていた感もあり、今回のハナムの方がリアルな描かれ方と言えるのかもしれません。

 さらに危険な流刑地「悪魔島」に移送されたパピヨンとドガ。絶望と苦闘の中で育まれる彼らの友情、自由への渇望は、今回も健在です。ノアー監督は丁寧な演出で彼らの肉体的精神的葛藤を描写。その痛みを観客に伝えていきます。それゆえにこそ、長い雌伏の時を経た最後のチャレンジの瞬間は、観客自身にも解き放たれるような快感を与えてくれるのです。

(付記)

 しかし、残念なことがひとつ。それは旧作でクライマックスに流れたジェリー・ゴールドスミスによるテーマ曲が不在なことです。あの頃は映画館を出た後も耳に残るメロディーの映画音楽(主題歌ではなく)がずいぶんあったのだなと思い出すとともに、映画における劇伴音楽の重要性について改めて考えさせられたのでした。最近の映画では音楽が効果音化しているようで…。

(『パピヨン』は6月21日から公開)

配給:トランスフォーマー

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