偶然から始まった世界旅行が様々な人を幸せにする『クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅』

 タイトルの『クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅』そのままの内容です(正確には「閉じ込められた」のではなく「入り込んだ」だけなのですが)。

 主人公はインドのムンバイ生まれのアジャ(ダヌーシュ)。母と二人暮しで、パリにいるという、まだ見たことのない父親に会うのが夢でした。しかし生活は苦しく、彼は旅費や生活費を稼ぐため、幼い頃から従兄弟たちと路上でマジックショーをして生計を立てていましたが、時に盗みを働くことも…。そんな貧しい日々の中、母が病死。ついに一念発起したアジャは、母の遺灰を手に、偽造パスポートと100ユーロの偽札を持ってパリに向かいました。

 アジャがパリで最初に向かったのは、とあるインテリアショップ。幼い頃に家具のカタログを見た日から、彼にとって憧れの場所だったのです。そこで見かけたアメリカ人の美女マリー(エリン・モリアーティ)に一目ぼれしたアジャは、強引なアプローチで翌日のデートの約束を取り付けます。ホテル代の持ち合わせのないアジャは、こっそり店内のクローゼットの中で眠りにつきますが、なんとそのクローゼットは彼を入れたまま夜中に搬送されてしまい、彼が目を覚ましたのはロンドンに向かうトラックの荷台だったのです!

 全編こんな感じで、アジャを次々と予期せぬ出来事が襲い、彼は自分の意に反して世界を転々とすることになります。イギリスで逮捕された彼は他の不法移民とともにスペインに強制的に送られ、空港で大きな衣装ケースに隠れたところイタリアのローマに運ばれ、そこからは気球に乗ってリビアに…。

 どんな逆境にあっても希望を捨てず、前向きに生きるアジャ。そんな真っ直ぐな彼との出会いが何人もの人たちに影響を与えていきます。パリで出会ったマリーは、たった数時間彼と過ごしたことで、その後も彼のことを忘れられなくなります。ロンドンに向かうトラックに乗り込んでいたソマリアからの不法移民ウィラージ(バーカッド・アフディ)を助けたことで、後にリビアで再会した時に彼の仲間たちの協力を得ることができました。ローマで会った大女優のネリー(『アーティスト』のベレニス・ベジョ)とは意気投合し、彼女の想い人との間をとりもつ手助けをすることに…。

 すべての出来事が、わかりやすいハッピーエンドに向かって結びついていく現代の寓話。各地の風景も美しく、観光映画としてよくできていますが、不法移民問題に関する問題提起も隠されているのが深いところ。監督は『人生、ブラボー』のケン・スコットで、盛りだくさんな内容を96分にコンパクトにまとめています。イギリスの警察署のシーンで警官が唐突に歌い出した時には「何だこりゃ?」と思ったのですが、これは英国の『モンティ・パイソン』のパロディ。フランス=ベルギー=インド合作映画ということもあってボリウッド映画風なダンス&ソングの見せ場もちゃんと作ってあります(歌手としても活躍するダヌーシュが本領を発揮、しかもお相手はベレニス・ベジョ!)。殺し屋に追われてローマの街を走り回るシーンでは、バックにニーノ・ロータ風の音楽を流すなど、かなり遊んでいます。全体的にポップな仕上がりなので、気楽に楽しめる作品なのです。

(『クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅』は6月7日から公開)

配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES

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Brio Films @Sebastien Bossi