佐伯泰英・原作作品初の映画化『居眠り磐音』で松坂桃李が正統派時代劇ヒーローに挑む

 原作は佐伯泰英。この作者の小説は何本もTV化されていて、本作も『陽炎の辻~居眠り磐音 江戸双紙~』として山本耕史主演でドラマ化されたことがありますが、なんと映画になるのはこれが初めてなのだとか。原作の『居眠り磐音』シリーズは本編51冊、さらに外伝的作品も数冊あるという超人気作品。映画版でその主人公・坂崎磐音を演じるのは『孤狼の血』『娼年』など最近活躍の目覚ましい松坂桃李です。

 九州・豊後関前藩。3年間の江戸勤番と道場での剣術修行を終えて戻った磐音と幼馴染の小林琴平(柄本佑)、河出慎之輔(杉野遥亮)の3人。磐音は琴平の妹・奈緒(芳根京子)との祝言を控えていましたが、思わぬ悲劇に巻き込まれ、奈緒を残して脱藩することになってしまいます。

奈緒(芳根京子)と磐音(松坂桃李)
奈緒(芳根京子)と磐音(松坂桃李)

 江戸で浪人として長屋暮らしを始めた磐音。鰻屋の「宮戸川」で鰻割きの仕事をしていますが、生活は楽ではなく、大家の金兵衛(中村梅雀)の紹介で両替商「今津屋」の用心棒をすることになります。穏やかで優しいが剣の腕は抜群の磐音は今津屋の主人・吉右衛門(谷原章介)に信頼され、金兵衛の娘で今津屋の女中・おこん(木村文乃)からも好意を持たれるように。

 しかし今津屋は、時の老中・田沼意次(西村まさ彦)が推し進める貨幣政策をめぐって、ライバルの両替商「阿波屋」の有楽斎(柄本明)と対立。何度も命を狙われる事件が起きてしまいます。江戸で出会った大切な人々を守るため、磐音は闘いの中に身を投じる決意をするのでした。

江戸で磐音が出会ったおこん(木村文乃)
江戸で磐音が出会ったおこん(木村文乃)

 つらい過去を背負いながらも、人当たりが良く優しさを失わない男。それでいて、実は剣の達人で、頭も切れる。幅広い読者から支持を受けたのも頷ける理想的なヒーローである磐音を、時代劇映画初主演となる松坂桃李が魅力的に演じています。

 監督は『空飛ぶタイヤ』の本木克英。迫力のある殺陣の見せ場を随所にちりばめ、人情劇の泣かせどころも笑えるシーンもあるという、正統派の時代劇を作り上げています。あえて難を言えば、主人公の磐音が強すぎてハラハラする展開にならないことですが、それこそが『水戸黄門』や『旗本退屈男』などの“ご存知もの”と同じ王道の設定なのでしょう。安心して観られるのも娯楽時代劇には必要な条件なのかもしれません。悪役の柄本明が憎々しさを最大限に振りまく演技を見せるのも、この王道に則ったもの。

 出演は他に佐々木蔵之介、石丸謙二郎、財前直見、陣内孝則、早乙女太一、橋本じゅん、中村ゆり、波岡一喜、奥田瑛二という豪華版。磐音をめぐる2人の女性の行く末には興味がわきますし、後の展開を予感させる伏線もいくつかあるので、シリーズ化を期待したい作品です。

(『居眠り磐音』は5月17日から公開)

配給:松竹

(c)2019映画「居眠り磐音」製作委員会