ナチスが極秘実験で生み出したものとは? 戦争映画とホラーをミックスさせた異色作『オーヴァーロード』

 1944年6月、第二次世界大戦の命運を分けるノルマンディー上陸作戦の前夜。アメリカの第101空挺師団にある密命が下されます。連合軍の通信を妨害する電波を出しているナチスの基地を破壊せよ。基地があるのはドイツ占領下のフランスの小さな村にある教会。しかし、そこへ向かった兵士たちが見たものとは…。

 前半は迫力たっぷりの戦争映画。対空砲火の嵐の中、果たして輸送機は兵士たちを目的地まで運べるのか? 次々と炎上する味方機。落下傘で降下する兵士たちを待っているのは、ドイツ兵と地雷原…。CGを駆使した映像と、実際の元海兵隊軍曹の監修によるリアリティあふれるミリタリー描写は、息詰まるようなサスペンスと緊張感にあふれています。

敵地に潜入したアメリカ空挺師団の兵士たち
敵地に潜入したアメリカ空挺師団の兵士たち

 しかし、この映画はそれだけではありません。目的地であるナチス基地の教会では、ある恐るべき実験が繰り返されていて、たどりついた兵士たちは悪夢のような体験をすることになるのです。戦争映画として幕を開けた本作は、途中から不気味で不穏な雰囲気を漂わせ、ホラー風味のアクション映画へと姿を変えていきます。この構成は、たとえばクエンティン・タランティーノ&ロバート・ロドリゲスの『フロム・ダスク・ティル・ドーン』のようなものだと言えばわかりやすいでしょうか。あの作品が、前半のサスペンスから後半はバンパイアもののホラーに姿を変えたように、本作ではナチスの神秘主義や超自然科学への傾倒が生み出した“あるもの”との闘いが後半のメインになるのです。

教会ではナチスによる極秘実験が行なわれていた…
教会ではナチスによる極秘実験が行なわれていた…

 こうした題材は、低予算のB級映画として作られることが多いのですが、なんと本作のプロデューサーは『スター・ウォーズ』『スター・トレック』の2大シリーズを手がけたJ・J・エイブラムス。パラマウントとバッド・ロボットというメジャー・スタジオの製作で、かなりのスケールで作られています。このあたりが彼の遊び心の表れなのでしょうか? 監督は『ガンズ&ゴールド』のジュリアス・エイヴァリー。

 主人公ボイスに抜擢されたのは若手俳優のジョヴァン・アデポ。その上官フォード伍長にはカート・ラッセルとゴールディー・ホーンの息子ワイアット・ラッセルが扮しています(目のあたりが若い頃の父親そっくり!)。占領下にあっても凛とした姿勢を崩さないフランス女性クロエを演じた新人マティルド・オリヴィエもなかなか魅力的。残忍で無慈悲なナチスの将校ワフナーに扮するのは『ゴースト・イン・ザ・シェル』でバトーを演じたデンマーク俳優ピルー・アスベックです。

 なお、題名の『オーヴァーロード』とはノルマンディー上陸からパリ解放までの作戦全体の正式名称「Operation Overlord」(大君主作戦)からとられていますが、映画の中ではこの言葉についての説明はありませんのでご注意を。

(『オーヴァーロード』は5月10日から公開)

配給:プレシディオ

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