これがシリアス・ジャッキー映画の到達点! テロで娘を殺された男の闘い『ザ・フォーリナー/復讐者』

 ジャッキー・チェンが製作も兼ねて主演、5代目007=ジェームズ・ボンド役者ピアース・ブロスナンと共演したサスペンス・アクション。監督は『ゴールデンアイ』『カジノ・ロワイヤル』と2度007シリーズを手がけた職人マーティン・キャンベルが担当し、社会派的なテーマも加えながら切れ味のいいアクション演出を見せてくれます。

 舞台はイギリス。レストランを経営している中国からの移民クァン・ノク・ミン(ジャッキー)は、無差別爆弾テロによって15歳の愛娘を奪われてしまいます。犯人に対して復讐を誓った彼は、北アイルランド副首相のリーアム・ヘネシー(ブロスナン)に面会を求めました。現在はイギリス政府のもと、北アイルランドの平和維持で奮闘しているヘネシーですが、かつてはUDI(アイルランドの独立を求める組織)に属していたのです。警察が当てにならないと知ったクァンは、ベルファストに戻ったヘネシーのオフィスに押しかけますが、相手にされません。彼の行動を邪魔に思ったヘネシーは部下にクァンを逮捕させようとしますが、彼は並外れた身体能力と戦闘技能を発揮し、ヘネシーの部下を返り討ちにしてしまいます。クァンとはいったい何者なのか?

 これまでコミカル・カンフー映画で人気を得てきたジャッキー・チェンがその笑顔を封印。現在60代の実年齢そのままに、唯一の家族だった娘を失った男のくたびれ果てた姿を、哀れさすら漂う雰囲気で演じています。さらに、移民の際に娘以外の家族が犠牲となってしまった悲しい記憶もよみがえり、彼を苦しめます。しかし、もちろんジャッキーがただの老人を演じるわけがありません。彼が演じるクァンには驚くべき過去があり、意外な特技を発揮して大暴れすることになるのです。

すべてを失った男の悲しみを体現するジャッキー・チェン
すべてを失った男の悲しみを体現するジャッキー・チェン

 思えばジャッキーは、何度も「コミカル演技からの脱皮」を試みてきました。人気者になって以降は、『ファースト・ミッション』(85)『ゴージャス』(99)『新宿インシデント』(09)『ラスト・ソルジャー』(10)などでシリアスなテーマやラブストーリーに挑戦。2012年の監督・主演作『ライジング・ドラゴン』では「アクション映画引退宣言」までしてしまいます。結局はアクションの世界に復帰したわけですが、『ポリス・ストーリー/レジェンド』(13)『ドラゴン・ブレイド』(15)など、奇想天外なカンフー・アクションに頼らないリアルな物語の比重は増えてきました。そんな中で発表された本作こそ、「シリアス・ジャッキーの到達点」と言えるのかもしれません。

 冒頭の娘(『ハリー・ポッター』シリーズでチョウ・チャンを演じたケイティ・ルング)とのシーンで笑顔を見せた以外は終始沈鬱な表情で、派手なアクションを見せない実践的な戦闘術で相手を倒していきます。そんな中で、悲惨な前半生を過ごしてきた男が、やっと手に入れた小さな幸せを喪失した絶望感と怒りを、しっかりと感じさせてくれるのです。

ジャッキーと敵対する役で存在感を発揮するピアース・ブロスナン
ジャッキーと敵対する役で存在感を発揮するピアース・ブロスナン

 共演のピアース・ブロスナンも、責任ある立場になった男が、イギリス政府とUDI過激派の板挟みになった苦悩の中で、(彼にとっては)わけのわからない中国人に状況を引っかきまわされる戸惑いを、渋い演技で見せます。クァンとヘネシー、二人の想いは互いに交じり合うことなく、すれ違っていくのですから。そこにはジェームズ・ボンドの軽快さはなく、袋小路に入った老境の男の哀愁さえ漂うのです。

 なお、今回日本公開されるのは、国際版よりジャッキーのアクションを増量した中国公開版。ラストにはジャッキーが歌う主題歌も流れます。

(『ザ・フォーリナー/復讐者』は5月3日から公開)

配給:ツイン

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