人里離れた家で奇妙な「掟」を守って暮らす兄妹。それが破られた時、何かが起こる…『マローボーン家の掟』

 映画の内容を語る前に、製作環境について解説したいと思います。この『マローボーン家の掟』の舞台はアメリカのメイン州で、出演者は英米の俳優ばかり、セリフはすべて英語です。しかし監督をはじめとするスタッフはスペイン人で占められ、ロケ地もスペインなのです。そう、この映画は国際的マーケットに向けて作られたスペイン映画(いちおうアメリカとの合作という形をとっています)。近年、才能あふれる映画人を輩出しているスペインでは、より多くの欧米資本を集めるため、知名度の高い俳優を起用した英語の作品が増えています。そして、それを実現するために求められるのが、優れたシナリオ。

 本作の製作総指揮はJ・A・バヨナ。監督デビュー作『永遠のこどもたち』で注目された後にアメリカに渡り、大ヒット・シリーズの『ジュラシック・ワールド/炎の王国』の監督に抜擢された俊英です。そのバヨナが、『永遠のこどもたち』の脚本家だったセルヒオ・G・サンチェスに監督デビュー(脚本も執筆)のチャンスを与えたのがこの作品。

 アポロが月に向かった1960年代末のアメリカ。田舎の人里離れた古い屋敷に、マローボーン家の人々がイギリスから逃げるように引っ越してきました。優しい母親のローズ(ニコラ・ハリソン)、責任感の強い長男のジャック(ジョージ・マッケイ)、家族思いの長女ジェーン(ミア・ゴス)、血の気の多い次男のビリー(チャーリー・ヒートン)、甘えん坊の末っ子サム(マシュー・スタッグ)。彼らは近所に住む地元の聡明な少女アリー(アニヤ・テイラー・ジョイ)と出会い、すぐに仲良くなっていきます。しかし平穏な日々は長くは続きませんでした。母のローズが病に倒れ、息を引き取ったのです。その遺言に従って彼女をひそかに埋葬した兄妹は、力を合わせて生きていこうと決めました。しかし、そこに不吉な銃声が。何者かが彼らを追ってきたのでした…。

 それから6か月後。ジャックたちは、「ジャックが成人するまでは家を離れてはならない」「鏡を覗いてはならない」「屋根裏部屋に近づいてはならない」「血で汚された箱に触れてはならない」などの「掟」を守ってひっそりと暮らしてきました。しかし必要に迫られて箱を開け、掟を破ったことから、家の中に数々の異変が起きはじめます。どこからともなく聞こえてくる不気味な物音、天井ににじみ出る異様な染み。やがて鏡の中の怪しい影や、天井裏から伸びる手の目撃証言が出るようになり、弟妹の親代わりをつとめるジャックはプレッシャーに押しつぶされそうになってしまいます。今は相思相愛の仲になったアリーだけがジャックの支えでしたが、彼女に恋する弁護士のポーターがマローボーン家に不審の目を向けてくるのです。この屋敷にはどんな秘密が隠されているのか? なぜ彼らは掟を作ったのか? やがてアリーはマローボーン家に関わる衝撃の真実を知ることになります。

 巧みに練り上げられた脚本は、映画を観終わって真相を知った後、もう一度観たくなる出来栄え。謎と伏線が全編に散りばめられ、それが解き明かされていく快感はサスペンス・ミステリーの醍醐味を味わわせてくれます。自然光を活かした明るさと異様で不気味な雰囲気を合体させた画作り、好奇心をかきたてるストーリーテリングは、新人監督とは思えない手際。

 キャストも、『サンシャイン/歌声が響く街』のマッケイ、『スプリット』『ミスター・ガラス』のテイラー・ジョイ、『サスペリア』のゴス、TV『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のヒートンなど、若手ながら実力派ばかりを集めています。彼らの熱演が、この家に隠された秘密に対して、観客の興味を盛り上げていくのです。

(付記)

 ミステリーですから、ネタバレにならないように紹介するのが難しい。実は本作、チラシの裏にある簡単な紹介文にすらネタバレになりかねない描写があるのです。できれば、それすら読まない状況で映画をご覧いただきたいものです。

(『マローボーン家の掟』は4月12日から公開)

配給:キノフィルムズ

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