ブッシュ政権の嘘を暴け!『記者たち 衝撃と畏怖の真実』フェイクニュースがイラク戦争の原因だった!?

 この映画『記者たち 衝撃と畏怖の真実』の題名にある「衝撃と畏怖」(原題の『Shock and Awe』)とは、2003年にアメリカ軍がイラクに侵攻した軍事作戦名です。当時のジョージ・W・ブッシュ政権は「イラクのサダム・フセインは大量破壊兵器を保有している」という嘘で国民や世界中を欺き、世論を動かして開戦に踏み切りました。現在ではそんな事実はなく、すべてが政府による捏造だったことは明らかになっていますが、この当時、大手メディアはこぞってこの主張に迎合し国民を煽っていたのです。しかし、そんな中にあって、ただ一社だけ、ひたすらに真実を追い求めた新聞社がありました…。

 2001年9月11日に発生した同時多発テロ。ブッシュ大統領はすぐにテロとの闘いを宣言、イスラム系テロ組織アルカイダのオサマ・ビンラディンが首謀者という疑いが浮上します。そんな中、31紙の新聞に記事を配信する中堅新聞社ナイト・リッダーのワシントンDC支局長ジョン・ウォルコット(監督のロブ・ライナーが自ら演じます)のもとに、政府はビンラディンを匿うアフガニスタンのタリバンだけでなくイラクとの戦争をも視野に入れているという情報がもたらされます。記者のランデー(ウディ・ハレルソン)とストロベル(ジェームズ・マースデン)が取材にあたりますが、専門家の意見を聞いてもビンラディンとイラクのフセイン大統領との繋がりは見出せません。しかし翌2002年、ブッシュ政権はイラクを「大量破壊兵器を保有するテロ支援国家である」とする非難声明を発表。世論は開戦へ向かって盛り上がっていきます。

 そんな状況下でもナイト・リッダーだけは元従軍記者のギャロウェイ(トミー・リー・ジョーンズ)を招聘して陣容を強化、「政府広報を垂れ流すのではなく、真実を求める報道」を目指しますが、傘下の新聞社に記事の掲載を拒否され、身内から国に対する裏切り者呼ばわりされるなど、世間の潮流から孤立していきます。身の危険すら感じる中、それでも粘り強く取材を続け、政府の嘘を暴こうとする記者たちでしたが…。

 歴史を改変することはできませんから、我々はイラク戦争がどうなったかは知っています。つまり、この作品は「ジャーナリズムの敗北」を描いたものなのです。ピュリッツァー賞を受賞したニューヨーク・タイムズのジュディス・ミラーを筆頭に、大手メディアのほとんどは政府の発表を鵜呑みにし、真実の追求や裏付け調査を怠ってしまいました。フェイクニュースが世論を動かし、国全体を戦争へと向かわせたのです。そして、多くの人命が失われる結果になりました。

 近年、『LBJ ケネディの意志を継いだ男』など社会派の面を見せているロブ・ライナー監督は、逆境の中にあっても信念とプライドを守り通した記者たちの姿を力強く描いています。同時に、志願兵となって戦地に赴いた青年の悲劇を描くことによって、社会情勢や時の勢いに踊らされることの恐ろしさも痛感させてくれるのです。マスコミが権力に対するチェック機能を失った時、どんな事態が引き起こされるのかを、この映画は我々に教えてくれます。実際にモデルとなった記者たちがアドバイザーとして参加しているため、取材に関する描写は非常にリアル。劇中での「我々は、我が子を戦場にやる者たちの味方なのだ」というセリフは、実際にウォルコット支局長が発したものをそのまま使用しているそうです。

 女優陣も豪華で、ランデーの妻にミラ・ジョヴォヴィッチ、ストロベルの恋人にジェシカ・ビールが扮しています。

(『記者たち 衝撃と畏怖の真実』は3月29日から公開)

配給:ツイン

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