50年前のアメリカで、勝ち目のない男女平等裁判に挑んだ女性の感動実話『ビリーブ 未来への大逆転』

 近年のアメリカ映画界では、「差別や偏見との闘い」をテーマにした作品が目立ちます。今年のアカデミー作品賞ほかを受賞した『グリーンブック』も、脚色賞を受賞した『ブラック・クランズマン』も人種差別を描いていました。今回ご紹介する『ビリーブ 未来への大逆転』が描くのは女性差別。85歳になった現在も最高裁判事として活躍しているルース・ベイダー・ギンズバーグが、若き日に闘った男女平等裁判を描いた感動の実話です。

 1956年、ルース(フェリシティ・ジョーンズ)はハーバード法科大学院に入学します。しかし学部長グリスウォルド(サム・ウォーターストン)は、女子学生を「男子の席を奪った者」としか見てくれません。同じ大学の2年生である夫のマーティン(アーミー・ハマー)と子育てや家事を分担しながら弁護士を目指して勉強するルース。夫がガンを宣告された時も絶対にあきらめず、彼の講義に出席してノートをまとめるなどの努力を重ね、やがて彼女の献身的な看病で奇跡的に回復したマーティンは、無事に卒業しニューヨークの弁護士事務所への就職も決まります。しかし、大学を首席で卒業したルースは、「女性で母親でユダヤ系」という理由で弁護士事務所の就職試験に連続して失敗。結局ラトガース大学の法学教授に就任するしかありませんでした。

 1970年、フェミニズムの機運が高まったとはいえ、まだ女性は家庭に入ることが義務付けられ、夫の名前でしかクレジットカードが作れず、仕事も自由に選べなかった時代。そんな時、夫のマーティンが彼女にある訴訟の記録を見せます。それは、親の介護費用控除が認められなかった男性の事例でした。法律では親の介護は女性の役目だと決めつけ、控除申請ができるのは女性だけと定めていたのです。もしこの法律が憲法違反だと認めさせれば、男女平等への第一歩になるかもしれない。ルースは無償でこの男性の弁護を買って出ます。

 あえて「女性解放」を前面に押し出さず「男性に対する差別」を争点に持っていき、突破口を見出そうとしたルースですが、その前に立ちはだかるのは、とてつもなく高い壁。米国自由人権協会のウルフ(ジャスティン・セロー)も、女性の権利のために戦ってきた伝説の弁護士ケニオン(キャシー・ベイツ)も、「絶対に勝てない」と断言。しかも法の権威を守りたい政府は、最強のチームを用意してルースを叩き潰そうとします。果たして彼女の大逆転の秘策とは?

 監督は『ピースメイカー』や『ディープ・インパクト』などで力強い映像を見せてくれた女性監督ミミ・レダー。ルースの実の甥であるダニエル・スティエプルマンが執筆した脚本を読んだ時、自らも女性ゆえの差別や偏見を経験してきたことを思い出し、監督を引き受ける決意をしたそうです。

 その想いに応えてルースに扮したフェリシティ・ジョーンズ(『博士と彼女のセオリー』)の熱演が光ります。ルース本人に会いに行くところから始め、徹底的なリサーチで役作り。決してあきらめない覚悟と、人間として母としての葛藤を見事に表現しています。画面から、彼女が感じている「理不尽な現実に対する怒り」が伝わってくるのです。

 そんなルースを支える夫を演じたアーミー・ハマーもはまり役。働く女性を支える優しい夫という、当時では珍しかった理想のパートナー像を、ユーモアと知性をブレンドさせて体現しています。

 もちろん、クライマックスは法廷シーン。タイトル通りの「大逆転」が待っていますので、観終わった後、爽快な気分で映画館を出ることができる快作です。しかし、もしルースがこの裁判を起こさなかったらアメリカは、世界はどうなっていたのかと思うと、単純に喜んでばかりもいられません。事実、今の社会でも数々の不平等や偏見が隠されているのではないか? そんなことも考えさせられる映画なのです。

(付記)

タイミングよく、ルース・ギンズバーグの軌跡に迫ったドキュメンタリー『RGB 最強の85才』も5月10日から公開されます。

(『ビリーブ 未来への大逆転』は3月22日から公開)

配給:ギャガ

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