突然の主婦の失踪事件が、隠されていた女たちの秘密を浮かび上がらせていく…『シンプルフェイバー』

 この『シンプルフェイバー』の原作小説は、あまりの面白さに出版を待たずして映画化が決まったというダーシー・ベルの「ささやかな頼み」。ミステリーなのでネタバレにならないレビューが大変難しく、したがってストーリーは発端部分のみを紹介させていただきます。

 ニューヨーク郊外に住むシングルマザーのステファニー(アナ・ケンドリック)は事故で亡くなった夫の保険金を切り崩しながら、育児や料理に関するブログの運営で慎ましく暮らしていました。ある日、同じクラスに息子を通わせているエミリー(ブレイク・ライヴリー)と知り合い、親しくなっていきます。人気のアパレル企業に勤務し、ベストセラー作家だった夫のショーン(ヘンリー・ゴールディング)と豪邸で暮らすエミリーとステファニーは住む世界がまったく違いましたが、意気投合。互いの秘密も打ち明けあう仲に。

 しかし、エミリーは「息子を学校に迎えに行ってほしい」とステファニーに頼んだまま突然失踪してしまいます。親友を助けたいと願ったステファニーは、ブログで情報提供を呼びかけると共に、エミリーの夫や息子の世話も買って出ます。やがてミシガン州でエミリーを目撃したという情報が入りますが…。

 エミリーはなぜ姿を消したのか? そして彼女はどこへ行ったのか? 事件は二転三転して予想もつかない結末に向かって突っ走っていくのです。

 監督は『ブライズメイズ/史上最悪のウェディングプラン』やリメイク版『ゴーストバスターズ』のポール・フェイグ。コメディー畑の監督だけに、ミステリアスな話に皮肉とユーモアをまぶし、快調なテンポの作品に仕上げています。フレンチポップスでかためたサウンドトラックもお洒落な雰囲気を醸し出す一因。エミリーのゴージャスな衣装の数々も見ごたえがあります(逆に、超庶民的なステファニーとの比較で笑いを誘ったりもするのです)。

対照的な役を演じたアナとブレイクがそれぞれ好演
対照的な役を演じたアナとブレイクがそれぞれ好演

 しかしこの映画の最大の成功要因は主演の二大女優のキャスティングでしょう。最近とみにコメディエンヌとしてのキレが出てきたアナ・ケンドリックは、気立てが良くてお人よしなのだけれど、かなり状況に流されやすく、時としてその親切心が暴走してしまうステファニーには最適の人選。一方のブレイク・ライヴリーはそのクールで華やかな美貌と気だるくエキセントリックな雰囲気が、いかにも秘密を隠していそうなエミリーにぴったりなのです。エミリーの失踪後、彼女の家族の世話をするためにその家に入り浸るようになったステファニーの見せる嫉妬や憧憬の表情、ついついエミリーのドレスを着てしまったことに端を発するドタバタ劇などは、まさにアナの実力の見せどころと言えるでしょう。表の顔と裏の顔を使い分けるこの二人の女性が見せる友情と打算、それぞれが抱える秘密と女のしたたかさをポップでカラフルな映像で包んだ、一級品のサスペンス・ミステリーなのです。

(『シンプルフェイバー』は3月8日から公開)

配給:ポニーキャニオン

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