映画愛にあふれた人々の想いが奇跡を起こす。イーストウッド・ファン必見の感動のドキュメンタリー

『サッドヒルを掘り返せ』

 1966年製作のセルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド、リー・ヴァン・クリーフ、イーライ・ウォーラック共演の『続・夕陽のガンマン』。イーストウッドにとっては最後のマカロニ・ウエスタンであり(この後にアメリカに帰国してドン・シーゲル監督と出会う)、かのクエンティン・タランティーノをして「生涯最高の映画」と言わしめた作品です。この『サッドヒルを掘り返せ』は、『続・夕陽のガンマン』をこよなく愛する映画ファンたちが起こした奇跡を追ったドキュメンタリー。

『続・夕陽のガンマン』のクライマックスとなる三すくみの決闘シーンの舞台となった“サッドヒル”という墓場は、実際にはスペインのマドリードから北方約250キロ離れたミランディージャ渓谷に作られたオープンセット。映画撮影用に数百人のスペイン兵士が動員されて作られ、5,000基もの墓標が円形に配置された巨大なセットでした。しかし撮影後は何のケアもなく放置され、約50年の時間の経過とともに土と緑に覆われ、ただの荒野になっていたのです。

 それを人力で掘り返そうという、とんでもないことを思いついた人たちがいました。2014年、地元に住む、映画作りとは何の関係もない一般人4人が、『続・夕陽のガンマン』の熱烈なファンだという共通点から立ち上がり(出演者の一人、イーライ・ウォーラックの訃報がきっかけだったそうです)、「サッドヒル文化連盟」なるものを結成。インターネットを通じてボランティアを募集したところ、ヨーロッパ中から同じ志を持ったファンが集まったのです。何の見返りも求めず、クワやスキやシャベルを持って、黙々と発掘作業に挑む人々の姿。

 監督のギレルモ・デ・オリベイラはこれが長編第1作。サッドヒルを発掘する人々の存在を知り、YouTubeにでもアップするつもりで取材を始めたところ、プロジェクトはどんどん大きくなっていき、その過程で、実際に『続・夕陽のガンマン』の製作に携わった人々へのインタビューにまで発展していきました。この、『続・夕陽のガンマン』の裏話が語られる部分もこの映画の大きな見どころ。音楽のエンニオ・モリコーネ、主演のクリント・イーストウッドといった大物をはじめ、『続・夕陽のガンマン』のファンで知られるメタリカのジェームズ・ヘットフィールド、ジョー・ダンテ監督、アレックス・デ・ラ・イグレシア監督、実際に美術助手、撮影助手、編集として関わったスタッフ、セットの設営に参加した元兵士などの貴重な思い出話が聞けるのです。

 そして2016年、『続・夕陽のガンマン』撮影50周年を記念するイベントが、復元されたサッドヒルで開催されたのですが、その様子がクライマックス。そこでは、一本の映画をひたすら愛し続けたファンのために、あるプレゼントが贈られるのです。これこそ、映画愛が生んだ奇跡。会場の興奮と感動が伝わってきて、思わずもらい泣きしてしまう瞬間でした。

(『サッドヒルを掘り返せ』は3月8日から公開)

配給:ハーク

(c)Zapruder Pictures 2017