音だけを頼りに事件を解決することはできるのか? 緊迫のサスペンス『THE GUILTY/ギルティ』

 電話から聞こえる声と音だけで誘拐事件を解決する、というテーマの映画は、ハリウッドでも2013年にハル・ベリー主演で『ザ・コール〔緊急救命指令室〕』という映画が作られていますが、こちらでは誘拐されて車のトランクに閉じ込められた被害者の様子が描写されていましたし、最後は主人公が犯人のいる場所に駆け付けます。しかし、今回公開されるデンマーク映画『THE GUILTY/ギルティ』の設定は、さらに独特。カメラは建物を出ることなく、ほとんど指令室の中だけで展開。観客と主人公に与えられる手がかりは「音」だけなのですから。

 ある事件をきっかけに警察官としての第一線を退き、緊急通報指令室のオペレーターになったアスガー・ホルム(ヤコブ・セーダーグレン)。交通事故による緊急搬送を遠隔手配するなど、些細な事件に対処する単調な日常を送っていました。しかし、ある一本の電話が彼の運命を変えていきます。それは今まさに誘拐されているという女性からの通報だったのです。彼に与えられた事件解決の手段は「電話から聞こえてくる音」だけ。車の発車音、女性の怯える声、犯人らしき人物の息遣い…。果たしてアスガーはこのわずかな手がかりをもとに事件を解決できるのか?

 とにかく異様なまでの緊迫感に満ちた作品です。映画内の経過時間と実際の上映時間がまったく同じというリアルタイム・サスペンス。アスガー以外の人間も指令室にいるのですが、その他の人間にフォーカスされることはなく、画面に映るのはほぼアスガーのアップです。したがって観客もアスガーと電話の向こうとのやりとりに集中せざるを得ません。しかし、被害者と思しき女性からの通話は断片的で、なかなか事態の全貌が見えてこないもどかしさは、アスガーと観客に共有されていくのです。ほとんど一人芝居に近い状況で、時には30分以上に及ぶロングテイクにも耐えたセーダーグレンの演技はお見事。電話の向こう側の、女性、子供、警察官など、声だけのキャストも名演を披露して(聞かせて)くれます。

 この作品の監督・脚本を手がけたグスタフ・モーラーは、まだ30歳の若手で、これが長編映画デビュー作という期待の新鋭。観ているうちに「なぜ、この映画のタイトルが『THE GUILTY/ギルティ』なのか?」という疑問が湧いてくるのですが、最後まで観るとそれに納得。巧みなミスリードも織り交ぜた、ストーリーテリングの妙を体験できる作品です。

 なお、この出来栄えにハリウッドはすぐさまリメイク権を獲得。現在のところ主役の有力候補としてジェイク・ギレンホールの名前があがっています。

(『THE GUILTY/ギルティ』は2月22日から公開)

配給:ファントム・フィルム

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