ギャング映画にロマンスとミュージカル・コメディをプラス。さらに、あっと驚く大仕掛けも…『愛と銃弾』

ヒロインのファティマと主人公チーロ

 これは、とんでもない怪作です。イタリアのアカデミー賞と言われるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の15部門で候補となり最優秀作品賞ほか5部門で受賞、ベネチア映画祭でも3賞に輝いたということから、どんな作品かと思ったら、フィルムノワールとラブストーリーとサスペンス・アクションを合体させたミュージカル・コメディーだったのですから。

 舞台はイタリアの大都市ナポリ。クールでハンサムなチーロ(ジャンパオロ・モレッリ)は、血よりも濃い絆で結ばれた長年の相棒ロザリオ(ライス)と“タイガー”と呼ばれるチームを組む凄腕の殺し屋。水産市場を仕切る“魚王”ヴィンチェンツォ(カルロ・プッチロッソ)とその妻の女帝マリア(クラウディオ・ジェリーニ)に雇われています。ある日、敵対する組織の襲撃を受けたヴィンチェンツォは自分の死を偽装して身を隠す計画を立て、自分にうり二つの男を殺害させました。しかし病院で、看護師のファティマ(セレーナ・ロッシ)に生きている姿を見られてしまいます。

 目撃者は消せ、とばかりに“タイガー”にはファティマ抹殺が命じられます。しかし彼女の姿を見たチーロは驚愕。ファティマこそは、まだ幼くて純真だった頃に愛を誓った恋人だったのです。チーロはためらわずに愛を選び、組織からの離脱を決意。ファティマを連れての逃避行を開始しますが、それは相棒ロザリオとの対決を意味していました…。

ミュージカル場面もふんだんに登場
ミュージカル場面もふんだんに登場

 と、ストーリーを紹介していくと普通のギャング映画のようですが、そこに全編ヘタウマな歌声が流れるのですから、なんともオフビート。ミュージカルといっても、その踊りはハリウッド製のようにきちんと振り付けされたものではなく、素人っぽい仕草に笑いが生まれます。キャラクターも徹底的にデフォルメされ、チーロはほとんど表情を変えませんし、ボスとその妻の欲望丸出しの描写はきわめてマンガチック。それでいて、組織に追われたチーロが反撃に出て、逆に殺し屋たちを襲撃していくシーンは『ジョン・ウィック』にも負けない迫力で描かれているのです。この落差にクラクラ。

 チーロとファティマのロマンスは濃厚に描かれるし、チーロとロザリオの宿命の対決に向かってサスペンスも盛り上がっていきます。つまり、あらゆるエンターテインメントの要素を過剰な味付けで投入した映画なのですね。監督は『宇宙人王さんとの遭遇』のマネッティ・ブラザーズ。そういえばあの作品も中国語を話す異星人が出てくる、一筋縄ではいかない映画でしたっけ。

 さて、この映画のお楽しみはそれだけではありません。詳しくは書けませんが、クライマックスにはあっと驚く大仕掛けが用意されていて、その種明かしが見られる大団円はじつに爽快! イタリア映画らしい明るさと華やかさに満ちた娯楽作品なのです。

(『愛と銃弾』は1月19日から公開)

配給:オンリー・ハーツ

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