M・ナイト・シャマランの仕掛けた物語は『アンブレイカブル』から18年後に完結!『ミスター・ガラス』

 最初にご注意。『ミスター・ガラス』の紹介のためにはどうしても『アンブレイカブル』と『スプリット』のネタバレが生じてしまいますので、あらかじめご了承ください。と言うか、『ミスター・ガラス』を楽しむためには前2作を観ておくことが必要条件なので、まだご覧になっていない方は観てから劇場に向かっていただいた方がいいと思います。あらすじは知っているよ、という方も、ビジュアルが重要な部分もありますので…。

 18年前に悲劇的な列車事故に遭遇、多数の乗客が亡くなった中でたった一人の生存者となったデヴィッド・ダン(ブルース・ウィリス)は、自身が不死身の肉体を持つ(ただし水が弱点)ことと触れることで悪を察知できる能力を持っていることに気付きます。以来、彼はその能力を使って人々を救う“ヒーロー”としてひそかに活動してきました。そんな彼が出会ったのは、24もの人格を持つ多重人格者ケヴィン(ジェームズ・マカヴォイ)と、その中に潜む超人的身体能力を持つ凶暴な人格“ビースト”。

フード姿で人助けをしてきたデヴィッド
フード姿で人助けをしてきたデヴィッド

 やがてフィラデルフィアのとある施設に集められた彼らは、そこに18年前の事件に関与したデヴィッドの宿敵“ミスター・ガラス”ことイライジャ(サミュエル・L・ジャクソン)も収容されていることを知ります。生涯で94回も骨折した脆い肉体と非凡なIQを持つイライジャは、自身と対極の存在である“不死身のスーパーヒーロー”の実在を信じ、それを探し出すためには手段を選ばなかった男なのでした。

 3人の前に立った精神科医のステイプル(サラ・ポールソン)は、彼らが自分たちの能力だと信じているものはすべて妄想にすぎないと断定。それを証明しようとしますが…。

 M・ナイト・シャマラン監督による脚本は大変よく練られたもので、『アンブレイカブル』から18年の時間が経過していることすらも意味のあるものとして描いています。前作でデヴィッドの能力を信じ続ける息子ジョセフ少年を演じたスペンサー・トリート・クラークが同じ役で出演、成長した姿で相変わらず父のサポートをしていることに観客をほっとさせるのです。イライジャをこよなく愛する母親役のシャーレーン・ウッダードも同じ役で再登場。ちなみに、シャマラン監督自身も同じ役で出てきます。

『アンブレイカブル』はアメコミ・ヒーローの誕生物語を、派手さを消した上でリアルに描いたものでしたが、本作にもシャマランのアメコミ愛はあふれています。スーパーヒーローとは? スーパーパワーとは? ヴィラン(悪役)とは? といった問いかけにきわめて真面目に、かつアメコミの文脈に従いながら答えようとしているのです。

脆弱な体とは反対に天才的な頭脳と強靭な意志を持つイライジャ
脆弱な体とは反対に天才的な頭脳と強靭な意志を持つイライジャ

『スプリット』からの登場人物では、ケイシー役のアニヤ・テイラー・ジョイが、ケヴィン=ビーストに対する複雑な感情を表して女優としての成長を見せます(『スプリット』を観ていないと彼女の立ち位置が理解しづらいのです)。そしてマカヴォイの多重人格演技は『スプリット』以上に炸裂。数秒ごとに女性や9歳の少年、潔癖症の男から荒々しい男まで、ころころ変わるその表情は演技派マカヴォイの面目躍如。

 タイトルロールでありながら最初の30分は顔も見せず、1時間経過したあたりでようやくセリフを発するのがジャクソン扮するミスター・ガラス。しかし観終わった後に、しっかり彼の映画だったことを感じさせる作劇はシャマランならではの巧妙さ。関係者が一堂に会し、パズルのピースがぴったり合った時のように隠された秘密が明らかになっていく時の高揚感は、シャマラン完全復活を告げるものなのです。

(付記)

シャマラン監督によると、『アンブレイカブル』の初期の脚本には、ケヴィンによる女性誘拐事件も描かれていたそうです。物語のトーンに合っていないために削られたのですが、結果的には独立した物語になって成功だったと言えます。

(『ミスター・ガラス』は1月18日から公開)

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

(c)Universal Pictures

前作『スプリット』のレビューはこちら