60年代スウィンギング・ロンドンへタイムトリップ!『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』

プレゼンターをつとめるマイケル・ケイン

『国際諜報局』(65)などの“ハリー・パーマー”シリーズや『アルフィー』(66)で60年代英国映画界のアイコンだったマイケル・ケインの当時の映像が映し出され、キンクスのご機嫌なビートが流れ出した瞬間から、心が躍ります。「スウィンギング・ロンドン」と呼ばれ、英国カルチャーが最も花開いた60年代にタイムトリップさせてくれる映画。

 音楽面ではビートルズやローリング・ストーンズ、モッズ・ムーブメントなどが世界にショックを与え(いわゆるブリティッシュ・インベージョン)、写真の世界ではデヴィッド・ベイリーが新たな時代を切りひらいた時代。ファッション界でのミニスカートの流行とピルの登場で女性の解放も進み、スレンダーなモデルのツィギーが人気を博していきます。

 この新しい動きが起きたのは、イギリスの歴史において初めて、若い労働者階級が声をあげることができたから。映画のプレゼンターでプロデューサーでもあるマイケル・ケインは、まさにその象徴でした。コックニー訛りで話す労働者階級の出身でありながら、時代の追い風を受けて成功の階段を駆け上った彼は、自らが輝いたユニークでオリジナリティにあふれた時代について語っていきます。

 ドキュメンタリーではありますが、現代の視点からの解説や考察を加えるのではなく、あくまでも「当時の気分や雰囲気を再現する」ことに重点が置かれている映像コラージュです。時代の証言者として登場するのはポール・マッカートニー、ミック・ジャガー、ロジャー・ダルトリー(ザ・フー)、マリアンヌ・フェイスフル(女優兼歌手)、ツィギー(モデル)、デヴィッド・ベイリー(カリスマ・カメラマン)、メアリー・クヮント(ミニスカートの発案者であるファッション・デザイナー)などのカルチャー・アイコン。しかしマイケル・ケインを除いては現在の姿を見せることなく、若き日の姿に現在の声を被せるという手法がとられているのです。これによって、21世紀の現実に引き戻されることなく、「あの時代」に浸れるというわけ。60年代のヒット曲の数々も、単なるBGMではなく、画面の意味とぴったり合った効果的な使い方をされています。

 とはいえ、光に満ちた部分だけが描かれているわけではありません。花開いた若者文化は、やがてLSDやマリファナなど麻薬の使用問題を起こしてしまいます。支配層は、そうした堕落した事物を排除する方向に向かい、シンガー・ソングライターのドノヴァンが薬物の使用で逮捕された最初のミュージシャンになったのです。ローリング・ストーンズはキース・リチャーズもミック・ジャガーも捜査対象になり、ブライアン・ジョーンズが死亡と、暗い影が覆い始めていきました…。

 半世紀も前の世界にタイムトリップしたような感覚を味わわせてくれる映画。上映時間は85分なのですが、もっとこの世界にひたっていたいと思わせてくれるのです。

(『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』は1月5日から公開)

配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES

(c)Raymi Hero Productions 2017