巨大ハリケーンが接近する中、現金強奪計画が…。災害パニックとアクションが合体!『ワイルド・ストーム』

 この作品が『ワイルド・ストーム』という邦題になったのは、監督が『ワイルド・スピード』1作目のロブ・コーエンだからでしょう(原題は『THE HURRICANE HEIST』)。『ドラゴンハート』『デイライト』『トリプルX』などのアクション映画を手がけてきた監督の作品だけあって、安心して観ることができます。

 アメリカ西海岸に史上最大規模、カテゴリー5の巨大ハリケーンが迫っていました。住民たちは警察の指揮によって全員避難することに。しかし、そんな状況を利用して、財務省の紙幣処理施設を襲撃し、廃棄される予定の6億ドルにも及ぶ現金を強奪しようという犯罪計画が進行していました。施設のセキュリティを担当しているケーシーは、偶然出会った気象学者のウィルと共に、施設を占拠した悪党集団に立ち向かうことになります。降りしきる雨、吹き荒れる嵐の中、壮絶な闘いが幕を開けました。

 ディザスター・パニックと犯罪アクション・サスペンスを合体させた映画。いわゆるビッグバジェットの超大作ではないので、街をまるごとハリケーンが破壊するといった大スペクタクルはありませんが、さすが職人監督コーエン、ツボを押さえた演出で、最後までハラハラさせてくれます。ユニークな点は、気象学者が味方なので、ハリケーンそのものの威力を悪党を倒すための武器として利用している点。

大活躍する特殊車両ドミネーターと主人公のウィル
大活躍する特殊車両ドミネーターと主人公のウィル

 また、ハリケーン・チェイサーが使用する災害用特殊車両「ドミネーター」も大活躍。これは装甲板で覆われた重量10トンにもなる車で、中には気象に関する最新機器が組み込まれた走る観測室であり、同時に装甲車でもある存在。ボディには地面に接地するためのスパイクもあり、これらの装備や頑丈さも映画に活かされているのです。

 主人公のウィルを演じるのはパフォーマンス・キャプチャー俳優として『猿の惑星/新世紀(ライジング)』で悪役のチンパンジー、コバの役や、『キングコング/髑髏島の巨神』のコング役を演じ、素顔でも『コントロール』などに出演しているトビー・ケベル。ケーシー役は『96時間』シリーズで主人公の娘を演じてきたマギー・グレイス。撮影時には大量の水をぶちまけられ、びしょ濡れになりながらも迫真の演技を見せています。『炎のランナー』の主演俳優のひとり、ベン・クロスも共演。特殊効果には『タイタニック』『ジオストーム』などに参加したスタッフが揃っています。

ケーシーを演じるのは『96時間』シリーズのマギー・グレイス
ケーシーを演じるのは『96時間』シリーズのマギー・グレイス

 さて、本作にはもうひとつのテーマがあります。それは地球温暖化に対する警鐘、さらに言えば現在のトランプ政権に対する異議申し立てなのです。トランプ大統領は「アメリカは寒いのだから温暖化はありえない」という発言をしたことがありますが、現在アメリカでハリケーンの被害が年々大きくなっているのは温暖化によってメキシコ湾の海水温が上がっているからなのです(ちゃんと映画の中にそういうセリフがあります)。コーエン監督は「気候変動を否定する人は原始人だと思う」とばっさり。そして「そんな人たちは、ホロコーストを否定する人のように思えるよ。科学が指し示す事実を身勝手に否定するという意味で同じ人種だ。おおかた環境への規制撤廃や環境への無関心が蔓延することで儲かる知り合いでもいるんだろう」とまで発言しています。アクション映画の中にこっそりと政権批判的なテーマを忍ばせるあたりに、長年ハリウッドで生き延びてきた監督の気概のようなものも感じたのです。

(『ワイルド・ストーム』は1月4日から公開)

配給:クロックワークス

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