パンク・ファッションの生みの親ヴィヴィアン・ウエストウッドは、その生き方までパンクだった!

 この映画『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』は英国ファッション界の女王の素顔に迫るドキュメンタリー。パンク・ファッションの生みの親として知られるヴィヴィアンですが、その生きざまはサブタイトル通り、まさに「最強」という言葉がふさわしいものでした。

 1941年に生まれたヴィヴィアンは、美術教師を志してアートを専攻、21歳の時に結婚し長男をもうけますが、この結婚は3年で破局。その理由が、「知的好奇心が満たされなかったため」で、「世界を見たかった」からという驚くべきもの。その後、2番目のパートナーとなったマルコム・マクラーレンと出会った彼女は、70年代に入るとブティックをオープンし、彼が見出したロックバンド、セックス・ピストルズの衣装をデザインしたことで、パンク・ファッションを生み出します。

 余談ですが、この時期のことについては、ピストルズのことも含めてヴィヴィアンは一切語ろうとしません。マルコムは(彼との間にも息子がいるのですが)バンドに関する功績を独り占めした上に、別れた後に彼女が苦境に陥った際に他社との提携を妨害するなど、かなり複雑な関係にあるので、そのことが理由なのかも(あるいはシド・ヴィシャスの死が関係しているのか)。

現在は地球温暖化対策などの環境問題に力を入れているヴィヴィアン
現在は地球温暖化対策などの環境問題に力を入れているヴィヴィアン

 ヴィヴィアンがすごいのは、ひとつの時代を作り上げながらも、そこに安住するのではなく、すぐに次のステップに移ったこと。パンクの次は19世紀ヨーロッパにインスパイアされたエレガントなスタイルに変身したのです。マスコミにどれほどバッシングされても(実際に出演したTV番組も収録されていますが、インタビューというよりも批判や嘲笑に近いのがすさまじい)めげることなく、85年には一度無一文になってしまいますが、古いミシンで手縫いした服で一からやり直します。90年と91年には連続してデザイナー・オブ・ザ・イヤーを獲得。2006年には3度目の受賞も果たしました。決して過去を振り返らず、ひたすら前進あるのみ。それが彼女の魅力なのです。

 監督は音楽やファッション関係の映像作家であるローナ・タッカー。これが初めての劇場用長編映画になりますが、このために3年間にも及ぶ密着取材を敢行。ヴィヴィアン本人のみならず、2人の息子たちや関係者、セレブやファッションモデルたち(ケイト・モス、ナオミ・キャンベル、パメラ・アンダーソンなど)がインタビューに答えます。

 ヴィヴィアンが3人目のパートナーに選んだのは、25歳も年下のアンドレアス・クロンターラー。現在は彼にコレクションをほとんど任せ、自らは社会活動に没頭しているヴィヴィアン。なにしろ「デイム」(男性だと「ナイト」に相当)の称号を得ても、戦車に乗って首相官邸にデモに行き、ニューヨークに支店が開店する日にもセレモニーより環境問題の活動を優先、という徹底ぶり。そんな彼女のエネルギッシュな生き方が、印象的な発言とともに浮き彫りになっていくのです。

「服のデザインには、物語と個性が必要なの」

「悪いけど、私はお金には興味がないの」

「いつも自己表現と深く結びついている。どう歩き、どう話し、どう人を引き付けるか」

「引退した人が自由な余生を送るように、私の意志で今すべきことをしている」

 何にでも全力投球するヴィヴィアンの姿に、元気がもらえる映画です。

(『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』は12月28日から公開)

配給:KADOKAWA

(c) Dogwoof