彼女はなぜわずか18歳で「フランケンシュタイン」を書けたのか? 女性の哀しみを描く『メアリーの総て』

 タイトルに登場するメアリーとは、メアリー・シェリーのこと。そう、あの有名な小説「フランケンシュタイン」の作者です。しかし、“ゴシック小説の金字塔”と言われるこの小説を書いた時、彼女がまだ18歳だったということは意外に知られていません。そんなに若い少女が、どうしてこんな作品を書くことができたのか? 年齢的にもメアリーに近いエル・ファニング(『マレフィセント』)が彼女に扮し、その波乱に満ちた人生を描いた作品です。監督はサウジアラビア初の女性監督であるハイファ・アル=マンスール。

 19世紀のロンドン。16歳のメアリー・ゴドウィン(エル)は墓場を訪れて、名高い思想家だった母の墓にもたれながら怪奇小説を読んだり作品を構想したりするのが好きな、一風変わった少女でした。作家の父(スティーヴン・ディレイン)を敬愛し、義妹クレア(ベル・パウリー)との仲は良好でしたが、継母との折り合いは悪く、そんな娘を見かねた父はスコットランドの友人のもとにメアリーを送り出します。

 そこでメアリーは異端の天才詩人と呼ばれるパーシー・シェリー(ダグラス・ブース)と出会ってしまいます。二人はたちまち恋に落ち、メアリーがロンドンに呼び戻された後にも、パーシーは彼女を追いかけてきました。しかし、パーシーには妻子がいたのです。父の許しを得ることはかなわず、ついにメアリーはパーシーと駆け落ち(なぜかクレアもついてきます)。これが苦難の始まりでした。

 家名を汚したということでパーシーが家から勘当されたことで極貧生活に陥り、創作活動どころではなくなるメアリー。せっかく生まれた娘も借金取りに追われて逃げる途中で亡くなってしまいます。そんな中でも“自由恋愛”を主張し放蕩三昧のパーシー。やがてクレアが愛人になっていた悪名高き詩人のバイロン卿(トム・スターリッジ)の滞在するスイス・レマン湖畔の別荘を訪れたメアリーとパーシーは、「皆で一つずつ怪奇小説を書こう」というバイロンの提案に、ある作品のインスピレーションを得たのです…。

バイロンの別荘で、滞在中の皆が怪奇小説を書くというイベントが行なわれる
バイロンの別荘で、滞在中の皆が怪奇小説を書くというイベントが行なわれる

 メアリーの人生は、死と哀しみに彩られています。彼女の出産と引き換えに母が亡くなったこと、夫を奪った形になったパーシーの妻が自殺したことを聞かされた罪悪感、幼い我が子を失った喪失感、バイロンに棄てられてしまったクレアへの思い…。「フランケンシュタイン」の内容が、“死者の復活”であるということはこれと無縁ではないでしょう。エル・ファニングは、あどけない少女が次第に強さや反骨心を得ていく姿を、知性の輝きとともに演じています。

 しかし、「フランケンシュタイン」を書き上げても、まだメアリーの苦難は終わりませんでした。“女性である”という理由で、出版を引き受けてくれるところはなく、唯一受けてくれた出版社の条件は“匿名での出版”だったのです。彼女の闘いはさらに続きます。

 パーシーとバイロンが最低の人間に描かれていることもあり、まだまだ女性の地位が低かった時代の女たちのどうしようもない哀しみが伝わってくる作品。演出は、前半は淡々と進むのですが、後半の別荘(ディオダディ館の出来事は『ゴシック』や『幻の城』などの映画でも描かれます)のあたりからドラマティックな盛り上がりを見せていくのです。再現された当時の衣装、ほのかな灯りの下で映し出される美術も美しく、印象に残ります。

(付記)

小説の中でフランケンシュタインが創造したモンスターは、残念ながらイメージの中での腕だけの登場です。

(『メアリーの総て』は12月15日から公開)

配給:ギャガ

(c)Parallel Films (Storm) Limited / Juliette Films SA / Parallel (Storm) Limited / The British Film Institute 2017