まさか生理用ナプキンの話で泣かされるとは…。インド発の感動実話『パッドマン 5億人の女性を救った男』

 インドに生理用ナプキンを普及させた男の実話、と聞いていただけなので油断していたのですが、これが実に感動的な映画でした。

 主人公は、インド北部の田舎町マヘーシュワルに住むラクシュミことラクシュミカント・チャウハン(アクシャイ・クマール)。ちょうどガヤトリ(ラーディカー・アープテー)と結婚式を挙げたばかりです。冒頭から映画は快調なテンポで、ラクシュミの愛妻家ぶりと、町工場の共同経営者でもある彼が手先の器用なアイディアマンであることを描いていきます。女ばかりの家族にも優しく接しているラクシュミ。そんな彼がある日知った驚愕の事実。それは妻が生理の時の処理に清潔とは言えない古布を使っていたことでした。しかも生理期間中は「穢れ」の時間として女性は部屋の中に入ることも許されていません。とはいえ、市販の生理用ナプキンは高価すぎると妻は使うことを拒否。彼女の健康を心配するあまり(実際に細菌の感染での死亡例も多かった)、ラクシュミは自分の手で生理用ナプキンを作ろうと決意するのですが…。

 まずこれが2001年の話だということに驚かされます。IT大国になった今でも、インドでは男尊女卑的な因習やタブーが残っているのですね。そうした中でのラクシュミの行動は周囲から狂人扱いされるばかりではなく、家族や愛する妻からも”恥”として拒絶され、ついにはガヤトリが実家に連れ戻され、ラクシュミ自身も村を追放されてしまうという事態に。

 インド映画らしく前後編二部構成の長尺作品。歌や踊りもたっぷりありますが、前半はラクシュミをこれでもかと追いつめ、失意のどん底に突き落としていきます。だからこそ後半の巻き返しが爽快に感じられる、というわけ。

 さて、ひとり都会のインドールに出たラクシュミは、そこでも研究を続け、新素材セルロース・ファイバーの存在を知ったことで大きな一歩を踏み出します。ネットの記事を参考に手作りの簡易製作機を開発。そんな時、たまたまこの地を訪れたデリー在住の女子大生パリー(ソーナム・カプール)と出会ったことから、彼の運命は大きく変わっていったのです。

 ダブルヒロインの本作で、後半活躍を見せるのがトップ女優である『ミルカ』のカプール。彼女が扮するパリーは大学教授の娘で進歩的な考えの持主。ラクシュミの考えに賛同し、ビジネスパートナーとして彼を支えていくことになります。古風なガヤトリと都会的なパリーの対比でタイプの違う女性像を描き上げ、ラクシュミとパリーの微妙な関係の進展で観客をドキドキさせてくれるのです。

 地位も学歴もない男が、ただ「愛する妻を救いたい」という一心で、周囲からバカにされながらも続けた行動が、多くの女性の健康不安を解消しただけではなく、職のない女性たちに新たな雇用も生み出していく。後半、多くの名もない女性たちと一緒に販路を広げていく場面の盛り上がりは、前半の苦境があってこその高揚感です。

 気持ちが先走って空回りすることも多いけれども、ひたすら前向きでピュアなラクシュミを演じるクマールの演技が素晴らしく、特にクライマックス、国連に招かれてニューヨークで行なった講演でのパフォーマンスが最大の見どころです。通訳を使わず、たどたどしい英語でのスピーチには彼の心がそのまま飛び出してきたような感覚を抱かされ、思わず涙してしまうのです。

(『パッドマン 5億人の女性を救った男』は12月7日から公開)

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント