半グレのワルどもが振り込め詐欺で稼いだ金を奪い取れ! どん底野郎たちの大逆転劇『ギャングース』

 前作『ビジランテ』で三兄弟の相克を息詰まるような緊張感と閉塞感の中で描いた入江悠監督ですが、この新作『ギャングース』はユーモアと緊張感がほどよくブレンドされ、ある意味突き抜けたエンターテインメント作品になっています。

 原作は「モーニング」に連載され、全16巻が刊行されているヒット・コミックで、原案となっているのはルポライターの鈴木大介が発表した「家のない少年たち」。そこに描かれた、親にも社会にも棄てられた少年たちのリアルな姿が映像化されています。

 親の虐待を受け、ろくに学校にも行けずに犯罪に手を染めるようになったサイケ(高杉真宙)、カズキ(加藤諒)、タケオ(渡辺大知)の3人は少年院で出会い、出所後は廃バスに住みついて最底辺の生活を送っています。彼らが生き抜くために選んだ仕事は、犯罪者だけをターゲットにした“タタキ=強盗”稼業。しかし大した稼ぎはできず、わずかな収入は道具屋兼情報調達係の高田(林遣都)にかすめ取られている毎日。そんなある日、盗品の中に“半グレ”系のアウトローによる犯罪営利組織=カンパニー「六龍天」が振り込め詐欺などの特殊詐欺に使うデータを発見します。3人はこれを利用してタタキを繰り返し、生まれて初めての大金を手にしますが、ついにカンパニーに身元がばれてしまいます。袋叩きにされ、すべてを奪われた3人。もう失うものは何もない。彼らは「六龍天」との全面対決を決意。彼らがマネーロンダリングしようとしている大金の奪取計画を立てるのです。

 今回描かれる悪役にはいかにもな暴力団風の風貌を持った人はおらず、一見普通の社会人に見える者ばかり(トップの安達を演じているのがミュージシャンでもあるMIYAVI。その配下も篠田麻里子や金子ノブアキなど)。その犯罪哲学(のようなもの)もビジネスライクに語られ、描かれる犯罪の手口はかなりリアルです。これは実際の取材で得た体験をもとにした描写で、マネーロンダリングの方法なども原作者の鈴木氏の監修が入っているそうです(監督談)。

 基本的な構造は、「人生で負け続けていた人々が、力を合わせて最後の一発逆転に賭ける」物語。3人組のやっている“タタキ”も所詮は犯罪ですから決して褒められたものではないのですが、悲惨な生い立ちの若者たちがギリギリの状況で生き抜くために必死な姿は純粋なエネルギーに満ちていて、応援したくなるのです。

 ハリウッドの“コンゲーム”映画のように練り上げた作戦を進行させながらも、そこでスマートには終わらず、結局は破れかぶれの殴り込みに突入するあたりに、入江監督らしいオフビートな持ち味が光ります(本人は「アメリカン・ニューシネマを意識した」と語っていました)。

(『ギャングース』は11月23日から公開)

配給:キノフィルムズ/木下グループ

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