遠藤憲一が元ヤクザの私立探偵に扮し、7歳の少女とコンビを組む『アウト&アウト』

 名バイプレーヤーとして数々の映画・TV・CMで活躍している遠藤憲一の主演作。元ヤクザの私立探偵に扮してハードボイルドな魅力を見せています。

 監督は80年代に『BE-BOP-HIGHSCHOOL』で一世を風靡した漫画家きうちかずひろ。91年の『カルロス』で映画監督デビューして以来、こちらでも才能を発揮、2004年には木内一裕名義で小説『藁の楯』を執筆し、同作が三池崇史監督によって映画化されてヒットしたこともあり小説家としても認められました。本作は2009年に発表した自身の小説を映画化したもので、長編映画としては18年ぶりになります。共同で脚本を執筆したのは『相棒』シリーズのハセベバクシンオー。

 日本最大の暴力団で最高幹部の側近だった矢能政男(遠藤)は、今はヤクザ稼業から足を洗い、訳アリで預かることになった7歳の小学二年生・栞(白鳥玉季)と二人で探偵事務所を営んでいます。ある日、緊急の電話での依頼に応え、指定された場所に向かった矢能でしたが、そこにあったのは依頼人の射殺体。しかもマスクをした若い男に銃を突き付けられ、凶器の拳銃を握らされた(指紋を付けた)上に死体と共に置き去りにされてしまいます。

 若僧に舐められたまま終わるわけにはいかない。プライドを傷つけられた矢能は反撃を開始。依頼人の身元を調べると、被害者は3年前にカンボジアで死んだはずの男だったことが判明。長年、悪党ばかりを見てきた矢能には、次第に事件の構図が見えてきました…。

情報屋の役で竹中直人が出演
情報屋の役で竹中直人が出演

 矢能の馴染みの情報屋の役で、きうちの初監督作『カルロス』に主演した竹中直人、矢能を助ける婆さん役で高畑淳子、与党の議員役で『スマホを落としただけなのに』の要潤、若き殺し屋役に岩井拳士朗が扮します。TV『とと姉ちゃん』で注目された子役の白鳥玉季が栞役を演じ、中年男と少女の“バディもの”として、血の繋がらない疑似親子の絆を感じさせる好演を見せてくれます。プロレスラーの中西学も悪徳刑事役でコミカルな味を見せ、渋川清彦をほんの少しだけ登場させるというぜいたくな配役も。

栞役の白鳥玉季が見せるけなげな表情も魅力
栞役の白鳥玉季が見せるけなげな表情も魅力

 主演の遠藤は徹底的に不愛想でハードな雰囲気を身にまとって、強面のイメージ通りの適役。(本人にとっては二枚目半や三枚目の役どころの方が演じやすかったそうですが…)内に秘めた優しさがポロリと出てしまうあたりの不器用さが、いかにもハマっているのです。出てくるのが悪党ばかりなのに、陰惨な雰囲気にはならず、どこかスタイリッシュなものを感じさせるのが、きうち監督の持ち味でしょうか。原作者が脚本・監督も担当しているので物語に無駄がなく、一見本筋とは関係なさそうに見えたエピソードが、ちゃんと連鎖してラストに向かっていく構成はお見事。事件の様相が見えてきたところで、終盤は予想を覆す展開もあって、最後まで楽しませてくれる犯罪エンターテインメントです。昔のTV『探偵物語』などがお好きな方ならば、きっと気に入ることでしょう。

(『アウト&アウト』は11月16日から公開)

配給:ショウゲート

(C)2017「アウト&アウト」製作委員会