徴兵制、安楽死、AI教育…10年後の日本はどうなっている?『十年 Ten Years Japan』

『DATA』の杉咲花

 2015年に香港で公開された(日本公開は17年)『十年』は、無名のスタッフ・キャストを集めた低予算映画ながら本国で記録的なヒットとなり、しかも中国で国営メディアに批判され上映禁止となったことから大きな話題を集めました。やがて「今から10年後の未来を描く」というそのコンセプトに賛同した国際的なプロジェクトが始動、日本、タイ、台湾で、各国5人のクリエイターがそれぞれの視点で未来を見すえた作品が作られることに。日本版は是枝裕和監督をエグゼクティブプロデューサーに迎え、5人の新鋭監督が集いました。

『PLAN75』(監督:早川千絵)高齢化社会の問題解消のため、75歳以上の老人に安楽死が奨励されるようになり、公務員(川口覚)は貧しい老人たちを勧誘する仕事に就いていましたが、妻(山田キヌヲ)の母が認知症になってしまい…。

『PLAN75』
『PLAN75』

『いたずら同盟』(監督:木下雄介)IT特区である小学校ではAIによる個別の道徳教育が行なわれていました。AIの「プロミス」に従いさえすれば、子供は苦しむことのない日常が過ごせるのです。しかし、用務員(國村隼)が世話をする馬にプロミスが殺処分の判断をしたことに反発する子供たちが出て…。

『いたずら同盟』
『いたずら同盟』

『DATA』(監督:津野愛)母の生前のデータが入った「デジタル遺産」を父(田中哲司)に内緒で手に入れた女子高生(杉咲花)。幼馴染(前田旺四郎)の協力で母の実像を知ろうとしますが、知られざる母の一面を見つけてしまい…。

『DATA』
『DATA』

『その空気は見えない』(監督:藤村明世)放射能による大気汚染を逃れるため人々が地下に住む世界。母(池脇千鶴)の教えを守って暮らしていた少女(三田りりや)は、友人(田畑志真)から地上の話を聞くうちに、まだ見たことのない地上への憧れを抱くようになり…。

『その空気は見えない』
『その空気は見えない』

『美しい国』(監督:石川慶)徴兵制が施行された日本。その公示キャンペーンを担当している広告代理店の社員(太賀)は、ポスターデザインを一新するという防衛省の決定を伝えるため、ベテランデザイナー(木野花)のもとを訪ねるのですが…。

『美しい国』
『美しい国』

 香港版が無名の俳優ばかりを起用していたのに対し、この『十年 Ten Years Japan』には知名度のある俳優たちが出演。しかし基本的には低予算なので、大掛かりなセットやSF的な未来描写は使用されていません。あくまでも登場人物たちの身の回りの日常描写の中から、今に繋がる「日本の問題点」が浮かび上がってくるのです。

 香港版での最大のテーマは「中国に飲み込まれつつある香港」でしたが、さて日本版は…。ここに描かれた「10年後」は決してバラ色の未来ではありません。しかも、いわゆる短編オムニバスにあるような、「気の利いたオチ」も用意されてはいないのです。あくまでもここにあるのは「ありうるかもしれない未来のかたち」であり問題提起。解釈と「その先」は観客にゆだねられているのです。香港版のキャッチコピーは「もう遅い/まだ間に合う」。その「まだ間に合う」の部分にそれぞれの監督たちの想いが重ね合わされていきます。どのエピソードからも、人間の感情に対する信頼や希望が見えてくるのですから。

(『十年 Ten Years Japan』は11月3日から公開)

配給:フリーストーン

(c)2018 “Ten Years Japan” Film Partners

香港版『十年』のレビューはこちらにあります