福士蒼汰が天才猫と共演。人と人のつながりを描き、観終わった後に優しい気持ちになれる『旅猫リポート』

 最初はよくある“ペット愛”映画だと思っていましたが、それだけではなく、“大切な人とのつながり”について改めて考えさせてくれる映画でした。

 ずっと野良猫だったオス猫のナナは、交通事故にあったところを悟(福士蒼汰)という青年に救われ、彼の大切な家族になります。5年間幸せに暮らしてきた一人と一匹。しかし、ある事情から悟は猫を飼い続けることができなくなり、ナナの新しい飼い主を探す旅に出ることに。

ナナと悟(福士蒼汰)は固い絆で結ばれていた
ナナと悟(福士蒼汰)は固い絆で結ばれていた

 ワゴン車に乗った悟とナナは、悟の小学生時代の親友・幸介(山本涼介)、高校時代の友人で今は夫婦になっている修介(大野拓朗)と千佳子(広瀬アリス)、幼い頃から世話になっている叔母の法子(竹内結子)を訪ね歩きますが、それは悟自身の人生を振り返る旅でもありました。悟の過去を知らないナナの目に、彼らはどう映るのか…。

高校時代の友人、修介(大野拓朗)と千佳子(広瀬アリス)
高校時代の友人、修介(大野拓朗)と千佳子(広瀬アリス)

 原作は『図書館戦争』の有川浩。児童書や絵本としても出版され、世界16か国で翻訳出版されているほど高評価を受けている作品ですが、猫の目線で進む物語ということが原因で実写化は不可能だと思われてきました。今回、それが実現したのは、天才的な演技力を持つ猫・ナナの存在あってこそ。2014年生まれのセルカークレックスのオスであるナナは、すでに数多くのドラマやCMの出演経験を持つタレント猫で、アニマルトレーナーの指導に応え、そのシーンに合った動きや表情を見せてくれます。撮影はナナ優先で行なわれ、そこには相当な苦労もあったでしょうが、悟とナナの絡みは絶妙。ナナの心の声は高畑充希が担当していて、このナレーションが入ることによって、ナナの表情は時に頼もしく、時に切なく見えてくるのです。常に上から目線で人間を見下しているところも、いかにも猫らしくて微笑ましい。

悟とナナは悟の叔母・法子(竹内結子)の元へ
悟とナナは悟の叔母・法子(竹内結子)の元へ

 さて、映画は現在の旅のパートと過去の思い出を交互に描いていきます。少年時代の悟(田口翔大)と両親(橋本じゅん、木村多江)との絆。修学旅行中に起きたある事件。親友の幸介(二宮慶多)とその父親との関係。小学生時代はぐいぐい前に出ていく積極的な性格だった悟は、なぜあんなにも優しく、すべてを受け入れる性格になっていったのかが、次第に明らかになっていきます。高校時代のほのかな恋心、叔母の法子との信頼関係。やがて悟がナナを手放そうと決意した理由が判明し、ドラマは別の一面を見せていきます。その時、ナナが出した答えとは?

 このところファンタジー系アクション映画の出演が多かった福士蒼汰が、今回は普通の青年役を等身大の演技で見せます。そのごく自然な佇まいは透明感あふれるもの。悟がたどってきた道のりを観客が知ることによって、その何もかもを包み込むような優しさがどこから生まれたのかがわかる仕組み。彼の心の中を思い、それに応えるナナの気持ちを感じた時、自然に涙がこぼれることでしょう。ちなみに福士蒼汰自身、少年時代パートや高畑充希の声が入った完成版を観て「自分の出演している映画を観て泣いたのは初めて」と語っています。

 音楽は『この世界の片隅に』のコトリンゴが担当。こちらも優しい響きが印象的です。

(『旅猫リポート』は10月26日から公開)

配給:松竹

(c)2018「旅猫リポート」製作委員会  (c)有川浩/講談社