ブルース・ウィリス×イーライ・ロス監督が『狼よさらば』を現代版にアップデートした『デス・ウィッシュ』

 この『デス・ウィッシュ』はブライアン・ガーフィールドが1972年に発表した同名小説の映画化。同じ原作はかつて74年にチャールズ・ブロンソン主演で『狼よさらば』として映画化され、計5本のシリーズにもなっています。しかし本作は、主人公の名前と、家族を失った一般市民が復讐に乗り出す、という基本プロット以外は『狼よさらば』とは別の設定です。

 ブルース・ウィリス扮する主人公ポール・カージーはシカゴの緊急救命医。たとえ患者が警官殺しの犯人であっても、命を救うために手術台に向かうような男でした。しかし、そんな彼の家族を悲劇が襲います。ポールが不在の家に強盗が押し入り、妻のルーシー(エリザベス・シュー)は射殺され、娘のジョーダン(カミラ・モローネ)は頭部に銃弾を受けて意識不明の昏睡状態に陥ってしまったのです。犯罪多発地帯のシカゴとあって警察の捜査は遅々として進まず、ポールの中に犯人への憎悪がこみ上げていきました…。

 悪人への怒りからポールが銃を手にするのは、この種の作品では当然の展開で、原作小説やオリジナル版、その後大量に製作されたヴィジランテ(自警団)映画と同様。しかし本作では「まったくの素人であるポールが次第に殺人者に変化していく」様子に焦点が当てられています。偶然、拳銃を入手したポールは、その撃ち方、組み立て方、手入れの仕方を、なんとYouTubeで学んでいくのです。このあたりは現代版ならではのアレンジですね。さらに、実際に銃を手に街に出たポールが遭遇した車泥棒を射殺するシーンは、偶然近くにいた目撃者によって撮影され、YouTubeに映像がアップされたことにより、パーカーのフードを被った彼はメディアから「死神(リーパー)」と呼ばれ、模倣犯まで出る注目の存在になっていくのです。スマホやSNSによって事件や情報の拡散の仕方がすっかり変わった“いま”に対応しているわけで、同時に誰もが簡単に殺人者になれる“銃社会”アメリカへの皮肉も込められています(銃売り場の女の子の場面には爆笑します)。

 過去の出演作からタフでやたらと拳銃をぶっ放すイメージの強いウィリスが、“普通の人”ポール・カージーを演じているのが新鮮で、拳銃の扱いに慣れないため手を怪我し、それがもとで警察に疑われないよう苦心するなど、めったに見られない表情がユニーク。やはりダーティな役柄の多いクセ者俳優ヴィンセント・ドノフリオをポールの弟の常識人役にキャスティングしているのも、イーライ・ロス監督らしい洒落っ気です。さらに、サービス精神あふれるロス監督は、過去のシリーズ5作からの引用を随所にちりばめ、旧作へのリスペクトも忘れてはいません。

 さて、原作やオリジナルでポールはストリートギャングに手当たり次第に制裁を加えていきましたが、肝心の実行犯は手つかずのまま。その不満点が今回は解消され、きっちり強盗団のボスとの直接対決を迎えます。また、ポールは自らが外科医という立場を活かし、医療現場に集まって来る情報を基に犯罪者の存在を探り当てたり、手術道具を使って悪党に拷問を加えたりと、今までにない展開を見せてくれるのです。このくだりはさすが『ホステル』『グリーン・インフェルノ』の監督だけあって、ホラー映画一歩手前の迫力あるシーンになっています。 

(『デス・ウィッシュ』は10月19日から公開)

配給:ショウゲート

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