明るく楽しいエンタメ・アニメながら、差別や迫害、情報操作に関する深いテーマも含む『スモールフット』

 本作の主人公ミーゴはイエティ。ヒマラヤ山脈に住むと言われる伝説のUMA(未確認生物)で、その足跡の巨大なことから“ビッグフット”とも、“ヒマラヤの雪男”とも呼ばれ、19世紀末からさまざまな目撃情報が語られ話題を集めてきました。この映画『スモールフット』は、そんなイエティと人間の遭遇を、イエティ側からの視点で描いています。彼らにとって人間こそが伝説の存在“スモールフット”なのです!

 分厚い雲に覆われ、人間が近づけない雪深い山の上で、イエティたちは平和に暮らしていました。ある日、心優しいけれど臆病でおっちょこちょいのミーゴは、偶然にも小さな足の不思議な生物(=人間)と出会ってしまいます。しかし、他のみんなはそれを信じてくれず、逆に嘘つき呼ばわりされて村から追放されることに。やむなく彼はスモールフットを探す冒険の旅に出ます。

 一方の人間界では、落ち目のレポーター、パーシーがイエティの伝説を利用しようと企んでいました。そこに現れたのは、なんと本物のイエティであるミーゴ! ミーゴはパーシーを証拠として見せるためにイエティの里に連れて行きますが、その頃、パーシーの撮影した画像が拡散され大きな騒ぎになっていたのです…。

人間界にやって来たミーゴはパーシーに出会う
人間界にやって来たミーゴはパーシーに出会う

 イエティと人間の出会いと絆を描いた心温まるファンタジー・アニメーション。まず技術的なことに驚嘆します。イエティたちは寒さに耐えるために全身を体毛で覆われていますが、その数、ミーゴの場合で320万本! それらが風にそよぎ、体の動きに反応するさまを一本一本描き分けるために、数々の新技術やソフトウェアが開発され、自然なCGキャラの動きを作り上げているのです。しかも彼らがいるのは雪と氷の世界、歩くたびに足跡ができ、それは風に吹かれて形を変えていきます。まさに気の遠くなるような作業が行なわれているのです。

個性あふれるイエティたちが多数登場
個性あふれるイエティたちが多数登場

 しかもこの作品、ただの明るく楽しいお話にとどまってはいません。その奥に深いテーマを潜ませてもいるのです。なぜイエティたちが人間とは別の場所で生きてきたのか。詳しく書くとネタバレになるので、真実は本編を観てほしいのですが、そこにはアメリカ先住民と白人の関係にも似た“差別と迫害”の問題が隠れています。また、“情報操作”と“情報公開”という現代的なテーマまでも。よくあるファンタジー作品のように互いのコミュニケーションがすぐにとれるわけではなく、イエティには人間の言葉が理解できず、人間も同様にイエティが何を言っているのかわかりません。そこからの相互理解への道のりをきちんと描いている作品でもあるのです。

ミーゴとパーシーは次第に互いを理解していく
ミーゴとパーシーは次第に互いを理解していく

 もちろん、『ミニオンズ』や『スマーフ2』のスタッフが製作に関わった作品ですから、素直に笑って楽しむのもOK。子供の頃に観て、大人になった時、隠されていたテーマに気付く、というのが正しい見方なのかもしれません。

 声の出演はチャニング・テイタム、ゼンデイヤ、ジェームズ・コーデン、コモンといった人気スターが、それぞれフィーチャーされた楽曲も歌います。日本語版では木村昴、早見沙織、宮野真守、立木文彦が声の出演で、彼らもそれぞれ歌声を披露。中でも、最近は『銀魂2』のキャラに扮して実写ドラマに出演するなど、多彩な活躍で目立っている立木はコモンの吹替なので日本語ラップに挑戦しています。

(『スモールフット』は10月12日から公開)

配給:ワーナー・ブラザース映画

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