臓器密売組織に誘拐された娘を救え! 父親の愛が暴走する香港アクション『SPL 狼たちの処刑台』

 『SPL 狼よ静かに死ね』『ドラゴン×マッハ!』に続く『SPL』シリーズ第3弾。とは言え、ストーリー上のつながりはありませんので、独立した作品として楽しめます。本作の主演は『ドラゴン×マッハ!』にも出演したルイス・クーで、香港の刑事リーに扮しています。

 タイのパタヤ。友人に会うために来ていた15歳の少女ウィンチーが何者かに誘拐されてしまいます。彼女が行方不明になった知らせを聞いた父親のリーはすぐに現地に飛び、パタヤ警察のチュイ(ウー・ユエ)の捜査に強引に同行。なんとか自分の手で娘を奪還しようとします。やがて国際的な臓器密売組織の存在が浮かび上がってきますが…。

 監督は『イップ・マン』シリーズを手がけたウィルソン・イップ。香港映画ならではのエモーショナルな演出が冴え、リーの怒りや不安、焦燥が観客にも伝わってきます。冒頭は幼いウィンチーとリーの仲睦まじい記録映像からスタート。やがて、男やもめで娘を育ててきたリーが、15歳になった彼女から恋人の存在と妊娠を告白され、怒りのあまりに娘の彼氏を未成年淫行の罪で逮捕させたことも明らかになるのです。これが原因でウィンチーはタイに行ったのではないか? そんな想いもリーを苦しめます。

 一方のチュイは、警察本部長の娘である妻が臨月で、幸せの絶頂。お互いが父親であるという共通点もあって、リーの娘の発見に力を尽くすのですが…。

 基本テーマは「命の重さ」。ある登場人物が発言します。「天災で命を落とす者もいる。それは運だ」。だから人為的に命を奪われたとしても「運が悪かった」のだと。香港映画ならではの容赦のない描写で、ある重要人物の命を長らえさせるための臓器のドナ―としてウィンチーが選ばれたことが判明し、その事実をもみ消すために権力の上層部が介入、リーを抹殺してすべてを闇に葬ろうとするのです。チュイにもまた、上司から圧力が加えられます。四面楚歌の状況の中、リーはどう戦うのか?

 ハリウッド映画ではありえない展開の物語ですが、それゆえにルイス・クーの苦悩する父親の演技が光ります。監督曰く「娘が消えてから1日目と10日目の緊張感を演じ分けていました」。セリフではなく、目だけでそれを表現し、時に暴走するのも納得させてくれる見事な演技。彼はこの作品で、デビュー25年目にして初の香港アカデミー賞(香港電影金像奨)主演男優賞に輝きました。

トニー・ジャーも派手なアクションを披露
トニー・ジャーも派手なアクションを披露

 アクション監督は、おなじみのサモ・ハン・キンポー。タイが舞台ということで『マッハ!』のトニー・ジャーがチュイの同僚刑事役で特別出演、アクションの冴えを見せています。

 追う者と追われる者の運命がそれとは気付かずに一瞬だけ交錯する、皮肉な瞬間が印象的で忘れられません。

(『SPL 狼たちの処刑台』は9月1日から公開)

配給:パルコ、AMGエンタテインメント

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