スキー選手からセレブ専門ポーカールーム経営者に。数奇な運命をたどった女性の実話『モリーズ・ゲーム』

 オリンピック候補だったスキー選手から、セレブ相手のポーカールームのオーナーへ。華麗なる転身で栄光と大金をつかみながらも、一大スキャンダルの渦中の人物となった実在女性の物語を、彼女の回顧録をもとに映画化した作品です。主演は『ゼロ・ダーク・サーティ』『女神の見えざる手』のジェシカ・チャステイン。

 2002年、冬季オリンピック予選の最終戦。女子モーグル北米3位のモリー・ブルーム(ジェシカ)は五輪出場を目前にしていましたが転倒。幼い頃からひたすら練習に明け暮れていたアスリートへの道を絶たれてしまいます。

 ロースクール入学前に休暇をとろうとハリウッドのクラブでウェイトレスのアルバイトを始めた彼女は、そこで常連客のディーン・キース(ジェレミー・ストロング)に雑用係としてスカウトされ、彼が主催するポーカー・ゲームを手伝い始めることに。そこには参加費1万ドルで、ハリウッド・スターのプレイヤーX(マイケル・セラ)をはじめ、映画監督、ラッパー、ボクサー、大実業家などのセレブばかりが集まっていました。彼らと交流を深めたモリーは、やがてディーンの手を離れ、自らが主催者となってポーカールームを開設することを決断します。

コスナー扮する父親との複雑な関係も見どころ
コスナー扮する父親との複雑な関係も見どころ

 一流セレブばかりが集まるポーカールームを、何の後ろ盾も持たない26歳の女性が経営。名だたるハリウッド・スターも顔を出し、どんなに金を積んでもオーナーからの招待がなければ参加が許されないという、まるで都市伝説のようなサロンが実在し、しかも訴訟がらみのスキャンダルで大きな話題となった「嘘のような本当の話」。これに目を付けたのが『ソーシャル・ネットワーク』『マネーボール』など、風変わりな人物の実話を脚本化してきたアーロン・ソーキンで、モリー本人に取材を重ね、回顧録には書いてなかった父親との複雑な関係なども描き出し、自ら初監督に乗り出しました。

 映画は2002年から14年までの時系列を行き来しながら、モリーという女性が歩んだ道を追っていきます。単に編年体で描くのではなく、複雑な構成をとりながらも、緊張感あふれるカットを積み重ねていくのは、さすがに熟練の脚本家ならではの手法。初監督とは思えない手慣れた演出ぶりを見せています。

 心理学者でもある父親をケヴィン・コスナー、訴訟を受けた彼女の弁護を担当するジャフィーをイドリス・エルバが演じ、重厚な演技でジェシカを支えます。レオナルド・ディカプリオ、トビー・マグワイアら、“モリーズ・ルーム”に参加していたと噂されるハリウッド・スターは、プレイヤーXという架空のキャラに代表されていますが、彼を演じたマイケル・セラは、一夜にして巨額の金を動かすほどの大きな力を持ち、自らの欲望に忠実で、しかも罪悪感の欠如した若者の底知れぬ恐ろしさを無邪気に体現しているのです。

モリーの運命を左右する映画スター、プレイヤーX(セラ)
モリーの運命を左右する映画スター、プレイヤーX(セラ)

 しかし、この映画最大のポイントはモリーを演じたジェシカの演技です。今のハリウッドで“強い女”を演じさせたら彼女の右に出る者はいないと言っても過言ではないでしょうが、ジェシカがすごいのは、同じ“強い”と言ってもそれぞれにまったくタイプの違った“強さ”を演じ分けている点。たとえば『女神の見えざる手』の主人公はワーカホリック気味で、性的欲望は男娼を買って処理していましたが、本作のモリーは性的には完全にストイック。自分のことよりも顧客の安全を第一に考えるような部分があります。『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』では強さの中に、妻として女としての弱さも覗かせましたし、『スノーホワイト/氷の王国』ではフィジカルな強さを見せ、『ゼロ・ダーク・サーティ』ではひたすら一つの目的に向かって生きる執念の女性を、といった具合にステレオタイプの演技に陥ることがありません。そんな彼女が演じているからこそ、信念を持って生きたモリーという女性が魅力的に輝いて見えるのです。

(『モリーズ・ゲーム』は5月11日から公開)

配給:キノフィルムズ

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