奥浩哉・原作コミック『いぬやしき』が実写映画化。木梨憲武と佐藤健が新宿上空で激突!

 原作・奥浩哉と監督・佐藤信介という『GANTZ』のコンビが再び組んだ映画。すでにアニメ化もされた作品ですが、今回の実写版ではCGを駆使し、日本映画のVFX描写に新たな地平を切り拓くべく、新技術の数々が注ぎ込まれています。

 物語は、定年間近の平凡なサラリーマン・犬屋敷壱郎(木梨憲武)の描写から始まります。家族のためにようやく一戸建てのマイホームを手に入れたものの、「日当たりが悪い」と誰も喜んではくれません。家庭には居場所がなく、高校生の娘・麻里(三吉彩花)からははっきり嫌われています。会社ではミスの連続で上司から叱責されるばかり(実際にこんな部下がいたら困るだろうな、とも思いますが)。医者から末期ガンを宣告されても、それを家族に告げる勇気もありません。そんな、見事なまでに情けなく弱々しい中年男(老け顔のため老人と間違えられることも)の哀感を、木梨が見事に醸し出しています。観ているこちらが歯がゆくなって、なんとかしてやりたくなると思えるようなレベルの完成度。

 その夜、捨て犬を飼いたいという願いも却下され、犬を連れて公園をさまよっていた犬屋敷は、偶然居合わせた若者と共に、空から落ちてきた光に飲み込まれてしまいます。気が付けば、彼の体には異変が起きていました。なんと、体中にメカが埋め込まれ、機械の体に生まれ変わっていたのです。しかも、自身のガンが消滅しただけではなく、彼には他人のケガや病気を治癒させる力も備わっていました。自分も、他人の役に立つことができる! 犬屋敷は、その力で密かに人々を救い始めますが、一方で、同じ事故に遭遇した高校生・獅子神皓(佐藤健)は、手に入れた力の凄さに酔いしれていました。

体中が機械化されてしまった犬屋敷(木梨憲武)
体中が機械化されてしまった犬屋敷(木梨憲武)

 強大な力を手に入れてしまった二人が、片や連続殺人鬼として、片や人々を救う存在として激突します。木梨の16年振りの映画主演というのも話題ですが、佐藤健も初の悪役に挑戦。一人の高校生が、ダークサイドに向って真っ逆さまに落ちていく姿をクールに表現しています。二人暮らしの母・優子(斉藤由貴)を誰よりも愛している獅子神ですが、ある事件をきっかけにすべてを失ってしまい、絶望のどん底に。やがて彼は人類すべてを憎み、大量殺戮を開始するのです。そのやり場のない絶望感を、佐藤は見事に演じているのです。表情一つ変えずに人を殺す。そんな残忍なシーンにすら、ある種の色気が漂っています。

冷酷な表情を見せる獅子神役の佐藤健
冷酷な表情を見せる獅子神役の佐藤健

 佐藤監督は『アイアムアヒーロー』もそうでしたが、コミックス原作の途中の部分までをアレンジして映画化することに名人芸を発揮する監督。本作でも、新宿決戦のくだりまでを映像化、登場人物の一部に原作とは違う運命をたどらせながら、手際よくまとめています。キャラの内面にも迫っていて、「家族を守りたい」という犬屋敷の想いがほとばしるシーンなどは、かなりアツいのです。共演は、獅子神の友人で後に犬屋敷の協力者になる安堂直行に本郷奏多、獅子神を慕うクラスメートの渡辺しおんに二階堂ふみ、大量殺人事件を追う萩原刑事に伊勢谷友介といった面々。

新宿のビル街を飛び回りながらの激闘が展開するクライマックス
新宿のビル街を飛び回りながらの激闘が展開するクライマックス

 しかし、何と言っても見どころはVFXを駆使した空中戦。新宿の街をリアルにCGで再現し、その中を二人が縦横無尽に飛び回り、武器を駆使して戦闘を繰り広げるクライマックスは、まるで自分たちも空にいるかのような気分にさせてくれます。このヴァーチャル浮遊体験を味わうには、やはり映画館の大スクリーンが必要なのかもしれません。

(『いぬやしき』は4月20日から公開)

配給:東宝

(C)2018「いぬやしき」製作委員会 (C)奥浩哉/講談社