夫と息子をテロで奪われた女。慟哭と絶望の末に下した決断とは? D・クルーガーの『女は二度決断する』

 本年度のゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞、昨年のカンヌ映画祭では主演のダイアン・クルーガーが女優賞に輝いた作品です。ドイツ生まれのダイアンですが、フランスでモデルとして活躍、フランス映画でデビューし、その後はハリウッドに活動の場を広げたため、ドイツ語で本格的に演技をするのはこれが初めてだったとか。

 生粋のドイツ人であるカティヤ(ダイアン)はトルコ系移民のヌーリと結婚。彼は麻薬売買の前科がありましたが今は足を洗い、トルコ人街で在住外国人相手のコンサルタント業を営んでいます。二人の間に生まれた息子ロッコは6歳。ささやかながら幸せな日々でした。

 しかし、その幸せは一瞬にして奪われてしまいます。ヌーリの事務所に爆弾が仕掛けられ、預けていた息子のロッコと共に死亡してしまったのです。

 夫と息子を一時に失い、悲しみにくれるカティヤに追い打ちをかけるように、警察はヌーリの前科に注目し、外国人同士の闇社会の抗争が原因ではないかと探りを入れてきます。怒りで錯乱しそうになるカティヤ。一時は自殺も考えた彼女に届いた知らせは、犯人が逮捕され、ネオナチの仕業だったことが判明したという事実でした。

 やがて裁判が始まり、カティヤ自身も証言台に立つ日がやってきます。しかし、その過程で彼女の心はますます引き裂かれていくことになるのです…。

裁判で、カティヤはますます怒りに震えることに…
裁判で、カティヤはますます怒りに震えることに…

 監督はトルコ系移民の両親を持つドイツの巨匠ファティ・アキン。人種差別に揺れ、ネオナチの台頭も問題視されている現状を踏まえながら、一人の女性の心情に寄り添った映画を作り上げています。しかし、何よりも凄いのはダイアンの演技です。夫と息子を失った女性の慟哭を、(友人とスパに行くために息子を夫のもとに残してしまったという)自らの行為に対する後悔を、そして犯人に対する怒りと復讐心を、感情をむき出しにしてエネルギッシュに演じます。カティヤの揺れる心に引きずられるように、観客もまた彼女に同化して絶望し、怒りに震えるのです。日本タイトルが示す「二度目の決断」に関しては賛否両論あるでしょうが、ダイアンの演技ゆえに納得させられてしまいます。

 ちなみにこの物語は、ドイツ警察史上最大の失態と言われるネオナチによる連続テロ事件が基になっています。その事件では初動捜査の見込み誤りから犯人逮捕まで10年以上もかかってしまい、その間に犯人は殺人やテロ、強盗を繰り返したのでした。こうした現実に対する批判も、この作品には込められているのです。裁判のシーンでは、多くの観客がカティヤと同じ怒りを共有するに違いないのですから。

 音楽を担当したのは、アメリカの人気ロック・バンド、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュ・オム。もともと同バンドのファンだった監督が、彼らの曲を使用することを想定して脚本を書き、楽曲の使用許諾を得ようとしたところ、映画のラフカットを観て気に入ったオムが新曲の提供を申し出た、という経緯でコラボレーションが実現しています。それだけに画面と音楽が融合し、サスペンスを盛り上げていくのです。

(『女は二度決断する』は4月14日から公開)

配給:ビターズ・エンド

(c)2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe

Production,corazon international GmbH & Co. KG,Warner Bros. Entertainment GmbH