松坂桃李が全裸で熱演する肉体同士の真剣勝負。”性と生”を描き切った、ある若者の成長物語『娼年』

 

大学生のリョウは”娼夫”としてスカウトされる
大学生のリョウは”娼夫”としてスカウトされる

 原作は石田衣良の同名小説。2016年には三浦大輔の演出、松坂桃李の主演で舞台化され、前売りチケットは売り出しと同時に完売、わずかな当日券を求めて人々が列をなし伝説の舞台となった作品です。その三浦&松坂コンビがそのまま続投し、映画化がなされました。

 松坂演じる主人公は大学生のリョウ。日々の生活に充足を感じることができず、学校にもほとんど行かずにバーでのバーテンダーのバイトに明け暮れていました。ある日、中学の同級生で今はホストになっている進也(小柳友)に連れられて、御堂静香(真飛聖)という女性が店を訪れます。ミステリアスな雰囲気をまとった静香はリョウに興味を持ち、自分の部屋に誘いました。そこに待っていたのは耳が聴こえない謎の少女・咲良(冨手麻妙)。静香は自分の目の前でリョウに咲良とセックスをするように促します。戸惑いながらも投げやりに行為を行なうリョウ。それは静香が経営する会員制コールクラブの入店試験だったのです。こうしてリョウは金で女性たちに体を売る“娼夫”として静香の下で働くことになりました。

さまざまな女性と関係し、その想いを受け止めていくリョウ
さまざまな女性と関係し、その想いを受け止めていくリョウ

 題材が題材だけに、物語の大半がセックスシーン、いわゆる“濡れ場”です。しかし、ポルノ映画やアダルトビデオとは一線を画した描写がここにはあります。通常の映画でしたら、そうした濡れ場は大まかな流れだけ決めてあとは役者任せにしたり、カットバックを多用してダイジェストで見せるものですが、本作ではきっちり振り付けがなされ、行為の最初から最後までがじっくり描き出されるのです。それは男と女の真剣勝負であり、そこにはある種の儀式のような荘厳さが(笑ってしまうような滑稽さと共に)存在します。それを全裸で演じる松坂と女優たちは、絶頂の表情までさらけ出していくのです。ここまで無防備な姿をさらすのは、役者にとっても大きなチャレンジだったに違いありません。

リョウの表情は次第に生き生きとしたものに変化していく
リョウの表情は次第に生き生きとしたものに変化していく

 リョウの前に現れる女性たちは、それぞれの秘めた性癖を明らかにし、欲望をぶつけてきます。手探りで“娼夫”としての役割を模索していく中で、リョウは彼女たちが性行為の奥に秘めた想いに気付き、それを受け止めていくようになるのです。映画の冒頭では「女なんてつまらないよ」とうそぶき、日々の生活に無感動だったリョウですが、女性たちとの交流が続くうちに表情は柔和になり、生き生きとしてきます。そう、この映画は彼の成長物語なのですね。だから、特異な題材を扱っていながらも、鑑賞後の印象はとても“爽やか”なのです。

 リョウをめぐる女たちに扮するのは、桜井ユキ、馬渕英里何、荻野友里、佐々木心音、大谷麻衣ら。ベテランの西岡徳馬と江波杏子が強烈な存在感を発揮し、特殊な性癖を持つリョウの同僚・東に扮した猪塚健太の怪演(松坂とのカラミもあり)が光ります。

 ちなみに原作では、本作の1年後を描く『逝年』と、30歳近くなったリョウたちのその後を描く『爽年』が発表されています。本作が“性と生”を描いたものだとしたら、それぞれが“愛と死”“喪失と再生”を描いたものだと言えるので、映画を観て「彼らはこれからどうなるのか?」が気になった人は一読をお勧めします。

(『娼年』は4月6日から公開)

配給:ファントム・フィルム

(C)石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会