動き出したら降りられない! リーアム・ニーソンのノンストップ列車サスペンス『トレイン・ミッション』

 無名時代のリーアム・ニーソンに会ったことがあります。『ミッション』(86)のロイヤル・プレミアがロンドンで行なわれた時のことで、それぞれに車が用意された主演級のスターや監督とは違い、彼は日本からの取材陣と同じバスに相乗りで会場に向かうことになったのでした。その際の会話で、無責任な日本人ジャーナリストは「ちょっとハリソン・フォードに似ているから、アクション映画に出てみたら?」などと言ったのですが、まさかそれから20年以上経った50代になってからアクションスターとして脚光を浴びようとは、彼自身も思いもよらなかったことでしょう。

 そんなニーソンの転機になったのが『96時間』(08)だったのは誰もが認めるところ。しかし、もうひとつ大きな転機と言えるのは、ジャウマ・コレット=セラ監督との出会いでしょう。本作『トレイン・ミッション』はコレット=セラ監督との、『アンノウン』(11)『フライト・ゲーム』(14)『ラン・オールナイト』(15)に続く4作目のコラボレーション。この監督の特徴は、単なるアクションやサスペンスを提示するだけではなく、主人公サイドに様々な人間的弱みを与えることによってドラマ性を高め、さらに凝りに凝ったシチュエーションを用意し、トリッキーなストーリーを楽しませてくれることにあります。

 本作もオープニングから凝りまくり。一人の男が朝目覚めてから出勤するまでを、編集技術を駆使して、約1年間の出来事を一連の流れとしてモンタージュしていきます。これによって、この主人公が毎日同じことの繰り返しで生活している平凡な男であることを、説明的なセリフなしに印象付けてくれるのです。

 郊外から毎日通勤列車でニューヨークの保険会社に通うマイケル(ニーソン)。しかし、10年間変わらずに続けられた日々は、突然終わりを告げます。会社からリストラを通告されてしまったのです。定年まであと5年の60歳。住宅ローンと大学に進学した息子の学費を抱え途方に暮れた彼は、妻にこの事実を打ち明ける勇気もないまま、いつもの通勤列車で帰路につきました。その車中で、彼の前にジョアンナ(ヴェラ・ファーミガ)と名乗る見知らぬ女が現れ、彼にある依頼をします。「乗客の中に、常連客ではないある特定の人物がいる。それを探り当てたら大金を与えよう」と。半信半疑のマイケルでしたが、相手はマイケルの妻の命を人質に、この捜索を強要してきたのです。自分は狙われていた! タイムリミットは列車が終着駅に着くまで。懸命にミッションを遂行しようとするマイケルですが、謎は深まる一方で、彼はどんどん追いつめられていきます…。

舞台はほとんどが疾走する列車の中
舞台はほとんどが疾走する列車の中

 最初は単なる“列車内サスペンス”かと思っていたら、事態は複雑化しエスカレート。次々と死者が出て、マイケルは格闘戦も余儀なくされていきます。さらに列車には暴走&クラッシュの危機も迫るのです。ヒッチコック作品を思わせる導入部から、意外に派手な展開を見せる後半への移り変わりは、さすがにコレット=セラ監督の持ち味が活かされています。舞台を列車内に限定し、マイケルが乗りこんでからは、外で何が起きているのかは列車の車窓から見える風景でしか認識できないという仕組みで(携帯電話は列車に乗る前に紛失している)、時間の経過もリアルタイム。いやおうなくサスペンスが盛り上がっていくのです。

後半には体を張ったアクション場面も
後半には体を張ったアクション場面も

 ニーソン扮するマイケルは、元警官という設定なので人探しには長けていますが、特別な戦闘力を持っているわけではありません。そんな彼が傷付きながらも家族のため必死で奮闘する姿が観客の共感を呼ぶのです。この監督=主演の組み合わせならではの、説得力あるサスペンス・アクションの快作です。

(『トレイン・ミッション』は3月30日から公開)

配給:ギャガ

(c) STUDIOCANAL S.A.S.

この監督=主演コンビの前作『ラン・オールナイト』のレビューはこちら

コレット=セラ監督作は、サメ映画『ロスト・バケーション』もおススメ