妖怪や魔物が人間と共存する鎌倉で展開する摩訶不思議なファンタジー『DESTINY 鎌倉ものがたり』

『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズの山崎貴監督が、同じ西岸良平のコミック「鎌倉ものがたり」を映画化したのが、この『DESTINY 鎌倉ものがたり』。『ALWAYS』では昭和の懐かしい街並みをVFXを駆使して再現した山崎組ですが、今回の舞台になるのは魔物や幽霊、妖怪や死神が当たり前のように人間と共存している異界の鎌倉なのです。

 ミステリー作家の一色正和(堺雅人)が新妻の亜紀子(高畑充希)との新婚旅行から鎌倉に帰ってくるところから物語は始まります。亜紀子はこの街の不思議な様子に驚くばかり。正和は作家業のかたわら鎌倉署の捜査にも協力していて、殺人事件の容疑者のアリバイ崩しをして手柄をたてたりもします。そんな一色家には推定年齢130歳以上の家政婦・キン(中村玉緒)や正和の担当編集者・本田(堤真一)、なぜか居座ってしまった貧乏神(田中泯)などが次々にやって来て騒がしい日々が続きます。

鎌倉署の事件捜査に協力する正和
鎌倉署の事件捜査に協力する正和

 原作は30年以上にわたって連載が続いている連作短編集。時に本格ミステリー、時に人情話、時に怪談に形を変えながら、西岸氏独特のメルヘンチックな絵柄で綴られていくファンタジーです。

貧乏神が一色家に住みついた!
貧乏神が一色家に住みついた!

 映画の前半は、そうした原作のエピソードを繋げながら、日常系のドラマが展開します。幽霊となった女性(吉行和子)とその夫(橋爪功)のお話など、ほろりとさせるものもあり、ここで登場する死神(安藤サクラ)が後半へのキーパーソンとなります。一見、独立したエピソードが並んでいるように思えますが、ちゃんと後半への伏線になっている描写も多いのでご注意を。今作では脚本も山崎監督が手がけています。

スーツ姿の死神役で登場するのは安藤サクラ
スーツ姿の死神役で登場するのは安藤サクラ

 そして後半は一気にアドベンチャー映画の世界へ。魔物・天頭鬼(声・古田新太)に黄泉の国へ連れ去られてしまった亜紀子を連れ戻すため、正和は生者でありながら黄泉の国に向かうのです。それに使われるのは、なぜか江ノ電のタンコロ!?

 黄泉の国のイメージは山崎監督の中にあるものをふくらませたそうで、まるで巨大な温泉街。ここを舞台に東洋風ハリー・ポッターというか、実写版の宮崎アニメのような大活劇が、山崎組ならではの大がかりなVFXを駆使して展開していきます。しかも、ここで正和自身が長く抱えてきたわだかまりが解消される場面もあって、夫婦や親子の愛情がしみじみと感じられる仕組みに。

 そう、この物語を通じて描かれるのは、正和と亜紀子の(ある意味運命的とも言える)夫婦愛。しかし夫婦と言っても性的な描写は皆無なので、大人から子供まで、すべての世代が楽しめる作品になっています。江ノ電、大仏、鳩サブレと、鎌倉名物も次々と登場。もちろん、鎌倉でもロケ撮影が行なわれていますが、監督たちが目指したのは「現実の鎌倉」ではなく「行ったことのない人が思い描いているような、どこか懐かしい古都・鎌倉」。時代設定は現代なのにスマホはおろか携帯電話も登場せず(一色家にあるのはダイヤル式の黒電話)、正和はパソコンやワープロを使わずに原稿用紙に万年筆で手書き、画面に登場するのは昭和のビンテージカーばかりという凝りよう。徹底的に現代色を排したことで、なんとなく温かい雰囲気の映画を作り上げています。

 上の文中で記した以外にも、薬師丸ひろ子、要潤、國村隼、三浦友和、鶴田真由、ムロツヨシ、市川実日子など、かなり豪華な共演陣が出演。

(付記)

亜紀子はもともと本田の出版社のアルバイトで、原稿取りに来て正和と出会ったという設定。したがって本田と亜紀子のやりとりもあるのですが、堤真一と高畑充希ですので、どうしても某社のCMとダブってしまいます…(笑)。

(『DESTINY 鎌倉ものがたり』は12月9日から公開)

配給:東宝

(C)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会