日本統治下の朝鮮を舞台にした緊迫のサスペンス『密偵』でソン・ガンホ、コン・ユ、イ・ビョンホンが共演

 1910年に日本は京城(現在のソウル)に朝鮮総督府を置き、朝鮮半島を統治下に置きました。以来45年に日本が太平洋戦争に敗戦するまで、朝鮮は日本の一部として扱われ、国内では祖国の独立を目指す武装秘密団体“義烈団”が活動していました。これはそんな時代、1920年代を背景にしたサスペンスです。監督は『悪魔を見た』のキム・ジウン。主演は『殺人の追憶』のソン・ガンホで、『新感染 ファイナル・エクスプレス』のコン・ユ、『屋根部屋のプリンス』のハン・ジミンらが共演。日本からは鶴見辰吾が出演し、イ・ビョンホンが特別出演でさすがの貫録を見せてくれます。

朝鮮人ながら日本の警察に勤務するジョンチュル(ソン・ガンホ)
朝鮮人ながら日本の警察に勤務するジョンチュル(ソン・ガンホ)

 朝鮮人でありながら日本の警察に所属し義烈団狩りを任務にしているイ・ジョンチュル(ソン・ガンホ)は、上司のヒガシ部長(鶴見)から特命を受けます。それは義烈団のリーダーであるキム・ウジン(コン・ユ)に接近し、彼らの動きを監視するというものでした。ウジンに接触し、次第に懇意になるジョンチュル。しかし義烈団の側でも、団長のチョン・チェサン(イ・ビョンホン)がジョンチュルを二重スパイとして義烈団に引き込もうという計画が進行していたのです。日本警察と義烈団の板挟みになり、任務と愛国心の狭間で苦悩するジョンチュル。

抗日組織のリーダー、ウジン(コン・ユ)
抗日組織のリーダー、ウジン(コン・ユ)

 そんな中、義烈団は上海から京城に向かう列車に、日本の主要施設を標的にするに足る大量の爆弾を積み込むことに成功。しかし日本警察もその情報をつかみ、義烈団員逮捕のために人員を送り込みます。密偵は誰なのか。誰が味方で誰が敵なのか。列車内で緊張が走る中、京城で待ち構えている運命は…?

イ・ビョンホンが義烈団の団長役で出演
イ・ビョンホンが義烈団の団長役で出演

 「スパイ映画を撮りたかった」とキム・ジウン監督が語ったように、これは上質のサスペンス映画。衣装やセットなど、細密に再現された舞台背景の中、濃密な人間ドラマが描かれていきます。特に疾走する列車内でのやりとりがスリリング。日本占領下の抗日運動を描いた作品ですが、単なる反日映画ではないのも特徴。鶴見辰吾の役どころは、拷問強要シーンなどに見られるように、いわゆる悪役ですが、不必要に憎々しさを強調することなく、時代の影の部分を象徴する存在として描かれているのです。音楽の使い方が、またお見事。ルイ・アームストロングの歌やラベルのボレロに乗せて描かれるシーンが鮮烈な印象を残してくれます。

ジョンチュルの上司・ヒガシ部長に扮する鶴見辰吾
ジョンチュルの上司・ヒガシ部長に扮する鶴見辰吾

 出演者たちはいずれも好演。特にソン・ガンホは、設定上日本語でのセリフも多いのですが、たどたどしい日本語や棒読みになることなく、しっかりと日本語での演技になっているのに感心させられます(『お嬢さん』と比べれば、その差は歴然!)。対するコン・ユの方も、ある真実を告げられた時に見せる驚愕と悔恨の表情が哀切で、胸を締め付けられるような思いを抱く観客も多いことでしょう。

 本作はワーナー・ブラザース・コリアのローカル・プロダクション第1弾として製作されたもの。韓国で3週連続1位となり観客動員750万人突破の大ヒットとなりました。

(『密偵』は11月11日から公開)

配給:彩プロ

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