政治を裏で動かす存在・ロビイストとは? 美しく強いヒロインがアメリカの闇と戦う『女神の見えざる手』

 ロビイストという言葉は聞いたことあっても、実際に彼ら(彼女たち)がどのような活動を行なっているのかを知ることはなかなかできません(もともと極秘裏に進めなければいけないことが多いので、それもまた当然なのですが)。

 特定の団体の依頼を受け、政党や議員に働きかけ、政治的決定に影響を与える。さらにマスメディアに対しても戦略を立て、世論をも動かしてしまう…。オリンピックの開催地決定から大統領選挙に至るまで、ロビイストの力は計り知れないほど大きいのです。(議員が院外者と控室=ロビーで面会したことから生まれた「ロビー活動」をする人なので「ロビイスト」と言います)。しかし、その手法には法律違反すれすれのものも…。

 この映画『女神の見えざる手』の主人公エリザベス・スローン(ジェシカ・チャステイン)は、そんなロビイストの中でも特に切れ者として知られる人物なのですが、このキャラクター造形がまさにお見事! 常に先を予測し、相手の(ロビー活動には大抵、相反する利益を求める人たちを代表する競合相手がいます)裏をかく。敵が切り札を出してきた際には、さらにそれを上回る切り札を用意します。しかも、それに関しては仲間にも全容は知らせず、部下や、時には自分自身さえ囮や道具として使うことも厭わない…。当然スタンドプレイや独断専行が多くなるので周囲は振り回されていくわけです。すべてにおいて優先されるのは「勝利すること」。

 しかも彼女、私生活はないに等しく、眠る時間がもったいないと眠気止めの強力な薬を常用し、食事は“いつでも開いているから”という理由で同じ中華料理店。家族や恋人を持たず、男性への欲望は高級エスコートサービスで満たすという徹底ぶり。しかしメイクやスタイルは完璧で、常にさっそうと歩く姿は見ほれるほど美しい。ワーカホリックでありながらも、洗練された強くて美しい大人の女性なのです。

スーツ&ヒールの洗練されたファッションも見もの
スーツ&ヒールの洗練されたファッションも見もの

 この役にハマりまくっているのがオスカー候補の実績もあるジェシカ・チャステイン。強い意志の力を全身から発散し、クールで非情でありながらも時に人間的な脆さものぞかせるヒロインの姿は、まさに彼女の演技力あってのものです。

 さて、物語はそんなエリザベスが政府の聴聞会に呼ばれるところから幕を開けます。彼女は過去に犯した不正の疑惑で裁かれようとしているのですが、それは彼女が今抱えている案件と大きな関わりを持っていました。

 数か月前までは大手ロビー会社で誰もが一目置く働きぶりを見せていたエリザベスは、銃規制を強化する法案を廃案に持ち込んでほしいという大物議員からの依頼を一蹴、逆にチーム・スタッフを引き連れて退社、小さなロビー会社で銃規制法案に賛成する陣営の応援に回ったのです。当然、彼女には元の職場からの妨害が次々と仕掛けられますが、次々と相手の先を行く行動力で、事態を優位に進めていきます。しかし、思わぬ障害が立ちはだかって…。

上司役で共演するのは『キングスマン』のマーク・ストロング
上司役で共演するのは『キングスマン』のマーク・ストロング

 監督は『恋におちたシェイクスピア』のジョン・マッデン。ポリティカル・サスペンスとして二転三転する物語を巧みにまとめあげ、観客を翻弄していきます。徹底的に追いつめられたエリザベスが隠していた一発逆転の秘策とは? 最後の最後まで目が離せない作品です。

 またこの映画、銃乱射事件がきっかけとなった銃規制法案というタイムリーな話題を題材にしてアメリカの現実を描き出していますが、同時にロビイストたちと議員のやりとりを通じても、再選や議席のことばかり考えている議員たちによって大切な法案そのものがまるで選挙ゲームの道具のようになってしまっているという皮肉をも投げかけているのです。

(『女神の見えざる手』は10月20日から公開)

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