実在する”呪われた人形”のルーツを描く『アナベル 死霊人形の誕生』はJホラーのファンにもおススメ!

 この映画に出てくるアナベル人形は実在し、アメリカのコネチカット州にあるオカルト博物館で、「絶対に開けてはならない」と書いたガラスケース内で厳重に管理され、月に2回、定期的に神父の祈祷を受けているそうです(ただし、人形のデザインは映画とは異なります)。この博物館のオーナーがウォーレン夫妻。そう、『死霊館』とその続編『エンフィールド事件』で主役を務めた実在する超常現象研究家なのです。

 そんな縁で、アナベル人形は『死霊館』のオープニングとクライマックスに登場し、観客に強いインパクトを与えました。その結果『アナベル 死霊館の人形』というスピンオフの主役にもなったのです。今作『アナベル 死霊人形の誕生』は、そのルーツを探るもの。“呪われた人形”はいかにして誕生したのかを描くとともに、『死霊館』サーガ全体のプロローグという位置付けにもなっています。

 1940年代半ば。人形師のマリンズ夫妻(アンソニー・ラパリアとミランダ・オットー)は一人娘と幸福な日々を送っていました。娘はかくれんぼが好きで、父のアンソニーとよく遊んでいます。しかし、そんな一家に悲劇が。教会の帰り道で、娘が交通事故に遭って亡くなってしまったのです。

 それから10年。夫妻の家を6人の孤児の少女とシスターが訪れます。夫妻だけでは広すぎる家を孤児院として提供しようという申し出があり、ちょうど行き場所を失っていた彼女たちが招かれたのです。新天地での生活に心躍らせる少女たち。しかし、その家の中には“何か”がいました…。

アナベル人形は、少女の一人を標的にする…
アナベル人形は、少女の一人を標的にする…

 監督は『ライト/オフ』のデヴィッド・F・サンドバーグ。実はこの監督、Jホラーの大ファンであることを公言していて、その影響を各所からうかがえる映画作りをしています。まず、アナベル人形は(たとえば『チャイルド・プレイ』シリーズのチャッキーのように)自在に動き回ったりはしません。そこにあったはずなのに、ふと気がつけばいなくなっている。逆に、確かに捨てたはずなのにいつの間にか戻っている。そんな細かな違和感の積み重ねで、じわじわと恐怖を盛り上げていくのです。見えそうで見えない、でも、確かに何かがそこにいる…。そんなぞわぞわした感覚が首筋をなでるように観客の心臓を締め付けていくのです。具体的なスプラッター、ショックシーンはほとんど描かれませんが、それでも怖いという、このシリーズの伝統は今回もしっかり活かされています。そしてクライマックスではそれまでの抑えた演出とは反対の派手な見せ場も投入していて、このメリハリのつけ方はいかにもハリウッド・エンターテインメント。全米大ヒットも頷ける出来栄えです。

『リング』を思わせる井戸が描かれたポスターはJホラーへのオマージュ?
『リング』を思わせる井戸が描かれたポスターはJホラーへのオマージュ?

 また、サンドバーグ監督が上手いなぁと思わせてくれたのは、舞台の状況説明の巧みさです。少女たちが家に着いた段階で、開かずの間、足の不自由な人間用の階段リフト、荷物運搬用小型エレベーター、いわくありげな納屋とその中にある案山子など、この後のドラマのポイントになるところを紹介、これからここを舞台にどんな物語が展開するのかを想像させてくれるのです。冒頭で親子の微笑ましい描写として描かれた「かくれんぼ」が、後半になって恐るべきショックシーンに転用されているのも、さすがの恐怖演出。

後半には派手なショックシーンも登場
後半には派手なショックシーンも登場

 この作品は、年代的にこれまでの『死霊館』シリーズの一番早い時間軸の物語なので、以前のシリーズを観たことがない、という人でも十分に楽しめる作品になっています。しかし、プロデューサーのジェームズ・ワンが商売上手なのは、エンディングが『アナベル 死霊館の人形』に繋がり、さらにはシリーズのスピンオフとして2018年に公開予定の『The Nun』(原題・『エンフィールド事件』に出てきた尼さんの格好をした悪霊をメインにした映画)にもリンクしているという点。こうして『死霊館』サーガはどんどん広がっていくんでしょうね。

(付記)

「はっきり見せない演出」について賛辞を送っていますが、実は一か所だけ「あれは見せてはいけないでしょ!」という部分があります。そこだけが残念な点。やはり西欧では、悪霊の具体的な姿を見せなければ観客は納得しないのでしょうか…?

(『アナベル 死霊人形の誕生』は10月13日の金曜日から公開)

(c) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

サンドバーグ監督の前作『ライト/オフ』のレビューはこちら

『死霊館 エンフィールド事件』のレビューはこちら