今度こそ本当に、これで完結! ビートたけし扮する大友の暴走の結末は?『アウトレイジ 最終章』

舞台挨拶に登壇した北野武監督と出演者たち(写真:MANTAN/アフロ)

 2012年秋に公開された『アウトレイジ ビヨンド』のキャッチコピーが「全員悪党 完結。」だったことからも、あの時点で北野武監督がこの作品『アウトレイジ 最終章』を作る予定ではなかったことは明らかです(そもそも第1作『アウトレイジ』からして主人公・大友の死を示唆する終わり方でしたからね。決定的瞬間を描かなかったことで続編では「実は死を偽装して生きていた」という強引な展開になりました)。北野監督の前作にあたる『龍三と七人の子分たち』製作時も、「『アウトレイジ』の続きを作ってくれ」と言われ、「それとは違うものを…」ということで構想されたものである、ということが語られていました。しかし、監督にそのつもりがなくても、シリーズを続けなければならない「ヒット作の呪縛」といったものが映画界には存在するのです。

 今や“世界のキタノ”としてベネチア映画祭をはじめ、特にヨーロッパで高い評価を受けている北野武監督作品ですが、こと国内での興行成績となるとかなり苦戦を強いられているのが実情です。『座頭市』を筆頭に、前述の『龍三と~』、初期の『その男、凶暴につき』などのヒットはありましたが、中には赤字を出してしまった作品もあり、そうした意味では安定したヒットが見込める『アウトレイジ』シリーズは映画会社や事務所(本シリーズはオフィス北野も製作・配給に関わっています)にとって、手放せない財産なのですね。かくして5年ぶりのシリーズの帰還となりました。

 東西の暴力団同士の抗争は関西の花菱会の勝利に終わり、かつては関東にその威を誇った山王会は日本最大勢力となった花菱会の配下に成り下がっていました。一方で、元大友組の組長・大友(ビートたけし)は韓国・済州島に渡り、日韓を牛耳るフィクサーの張会長(金田時男)のもとに身を寄せています。日本の争いから一歩引いた立場でのんびりと暮らしていた大友でしたが、花菱会の幹部・花田(ピエール瀧)が済州島でトラブルを起こし、張会長の手下を殺してしまったことから事態は急変。張グループと花菱会の間で緊張が高まる中、花菱会内部でも会長の野村(大杉漣)と若頭・西野(西田敏行)の間で内部抗争が勃発、さらに覇権奪回を目指す山王会の思惑もからんで悪党たちの暴走が始まります。そんな中、大友がすべての因縁に決着をつけるべく帰国しました…。

 全編にわたって怒号が飛び交い、裏切りや駆け引き、騙し合いが連続するのはこのシリーズの醍醐味ですが、それは今作でも健在。些細なトラブルが雪だるま式に広がっていき、やがては全面戦争にまで発展していく描写は、残酷さとユーモアがブレンドされた北野映画ならではの面白さ。“ほとんどのシーンがテイク1のみ。撮り直しをしないで撮影が進んでいく”という現場は、俳優たちに緊張を強いるものだったそうですが、そのピリピリした空気はそのまま映像にも残っていて、観客にも緊迫感を与えてくれるのです。

 ところで、第1作『アウトレイジ』では欲望に瞳をぎらつかせ、上昇志向も野心も持っていた大友ですが、シリーズを重ねるにつれ性格が変わっていきました。彼を動かす行動原理は“世話になった人や近しい人々への義理や恩義”になっているのです。前作で殺された木村(中野英雄。1作目のラストで大友を刺した張本人であるにも関わらず大友は彼を許し兄弟分となりました)の敵討ちや、張会長を襲撃した者たちへの報復が本作の大友の目的。もはや“悪人”というよりも、古いタイプの任侠映画に出てくるような“いいヤクザ”になりつつあるのです。相変わらず「うるせいバカ野郎!」「このやろう!」と叫び、なんとマシンガンを乱射するシーンまでありますが、そんな暴走をしながらも極悪非道(アウトレイジ)に徹しきれないのが今回の大友の立ち位置なのです。

 おそらく、「このまま行ったら、延々とシリーズを作り続けなければならなくなるかも」という危機感みたいなものが北野監督の中にはあったのではないでしょうか。かなり強引な幕引きでシリーズに終止符が打たれます。それもまた北野監督的な締め方。これまで楽しませてくれたことへの感謝もこめて、悪人どもの終幕を見届けたい完結編です。

(付記)

 相変わらずの豪華キャストの中では、北野組3作目にして本シリーズ初登場の大森南朋(大友を慕う舎弟の市川役)と前作から登場の張会長役・金田時男が光ります。特に金田はプロの俳優ではない実業家で、北野監督がその存在感に惹かれて出演してもらったもの。何気ない佇まいにも風格がにじみ出ていて、演技ではない“本物感”を醸し出しているのです。

(『アウトレイジ 最終章』は10月7日から公開)

(c)2017「アウトレイジ 最終章」製作委員会