エイリアン=ゼノモーフ誕生の秘密がついに判明! リドリー・スコット監督の『エイリアン:コヴェナント』

 最初にご注意。タイトルこそ『エイリアン』ですが、位置付けとしては『プロメテウス』(12)の続編ですので、未見の方は『プロメテウス』をご覧になってから劇場に行くのをおススメします。でなければ、冒頭の2人の人物(?)の会話などチンプンカンプンに感じてしまうでしょうから。

 物語の背景は2104年。『プロメテウス』の約10年後であり、『エイリアン』1作目の20年前にあたります。人類初の大規模宇宙移住計画を実行するために地球を飛び立ったコヴェナント号は、コールドスリープ中の15名のクルーと2000人の入植者を乗せ、新たな植民星となる惑星オリガエ6を目指して航行していました。『エイリアン』のノストロモ号が、いかにも労働者が乗る貨物船という描写だったのに比べると、こちらは清潔でハイテク。アンドロイドのウォルター(マイケル・ファスベンダー)が管理を担当しています。彼は『プロメテウス』に出ていたデヴィッドと同型の最新モデルという設定。

 しかしコヴェナント号には思わぬアクシデントが発生。船体は大きなダメージを受け、乗組員ダニエルズ(キャサリン・ウォーターストン)の夫である船長(なぜかノークレジットのジェームズ・フランコ。過去のビデオと記念写真のみの出演)を含む犠牲者が出てしまいます。懸命の修復作業を行なう中、コヴェナント号は謎の電波を受信。それは近くの惑星から発信されていて、地球の20世紀の歌「カントリー・ロード」を歌う女性の声も含まれていました。副官から船長代理に昇格したオラム(ビリー・クラダップ)はダニエルズの反対を押し切って航路を変更。惑星探索を命令します。そこは地球によく似た植物が生い茂る、理想郷のような星でした。しかし、なぜか動物の姿がまったく見当たらなかったのです…。

謎の信号を受信したコヴェナント号のクルー
謎の信号を受信したコヴェナント号のクルー

 今回は『プロメテウス』に出てきた怪物とも違う、“ネオモーフ”と呼ばれるクリーチャーが登場します。CGIで作られた彼らはすさまじいスピードで動き回り、クルーに襲いかかるのです。その生態系もエイリアンに似ているようでいて、少し違うという興味深いもの。やがて絶体絶命の窮地に追いつめられた彼らを救ったのは、なんとデヴィッド! ここで『プロメテウス』と繋がるので、やはり前作は必見なのです。注目なのはマイケル・ファスベンダーの演技力。通常の一人二役は“性格の違う双子”や“そっくりな他人”などが多いのですが、今回の彼の役は“同型のアンドロイド。ただし製造年代が違うのと経験値が異なるため若干の違いあり”というもの。“同じなのに違う”という微妙な演じ分けが必要とされる難役にも関わらず、ちゃんとそれぞれの個性も出しているのは、さすが演技派の真骨頂です。

アンドロイドの一人二役に挑んだファスベンダー(こちらはウォルター)
アンドロイドの一人二役に挑んだファスベンダー(こちらはウォルター)

 さて、今回最大の話題はエイリアン=ゼノモーフの誕生の秘密がついに明かされること。懐かしいフェイスハガーやチェストバスターも登場します。その詳細はぜひ劇場でご覧になっていただきたいのですが、問題はここでリドリー・スコットがシリーズを完全にコントロールしてしまったということ。元々このシリーズはダン・オバノン&ロナルド・シャセットの脚本から生み出されたもので、リドリーはあくまでも“演出家”として選ばれた存在だったのですが、ここに来て完全に「リドリー・スコットの『エイリアン』」という認識が確定されてしまったのですね。かねてからシリーズの続編についてはジェームズ・キャメロンの『エイリアン2』を除いて批判的だったリドリーは(『3』『4』に関してははっきり否定している)、本作での新設定を導入したことで『エイリアンvsプレデター』と『AVP2 エイリアンズvsプレデター』を「時系列的に矛盾する」ということで正史から除外し、「別世界での番外編」扱いにしてしまったのです。今後、リドリーはこのシリーズをあと2本作り、最初の『エイリアン』に繋げるつもりだそうで、『プロメテウス』に始まる「リドリー・スコットの『エイリアン』サーガ」が“正史”として続いていきます。ちなみに『エイリアン3』と『4』をなかったことにして、『エイリアン2』に直結する作品をニール・ブロムカンプ(『第9地区』)監督で製作する企画が進んでいたのですが、突然キャンセルされてしまいました。これも、サーガがいったん完結するまでは続きを作りたくないという意向の表れなのかもしれません。

今回の戦うヒロイン、ダニエルズ(キャサリン・ウォーターストン)
今回の戦うヒロイン、ダニエルズ(キャサリン・ウォーターストン)

 まあ、そんな裏事情は考えなくても、絶体絶命の窮地に追いつめられながらもエイリアンと戦うというホラーSFとしては十二分に楽しめるエンタメ大作になっています。『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』では文系のイメージが強かったキャサリン・ウォーターストンもタンクトップ姿で孤軍奮闘。元祖ヒロインであるリプリーを彷彿させる活躍ぶりを見せてくれます。

(付記)

これは『プロメテウス』の時も思ったのですが、未知の惑星に上陸するのにヘルメットも着用しないとか、そこで発見した生物(これは『プロメテウス』の方です)に手を伸ばすとか、緊張感が足りないのでは? という描写が気になります。

(『エイリアン:コヴェナント』は9月15日から公開)

(c)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved