時間を巻き戻して、もう一度あの夏を過ごしたい…。村上虹郎主演の『二度めの夏、二度と会えない君』

“青春・恋愛”と“タイムスリップ”、それに“バンド活動”というキーワードが並んだ映画。以前このページでレビューした『君と100回目の恋』と同様ですが、やはり時間テーマと青春恋愛ものは相性がいいのですね。さらに、この『二度めの夏、二度と会えない君』には“不治の病”という設定も加わっていきます。

演奏シーンの迫力も見どころ
演奏シーンの迫力も見どころ

 この作品は、冒頭10分でヒロインが発病して死亡するという異色の幕開けを迎えます。学園祭の夜、バンド「プライメンバー」のライブが大盛況のうちに幕を閉じたその帰り道。ボーカルの森山燐(吉田円佳)は突然倒れて病院へ運ばれてしまいます。病室へ見舞いに行ったギターの篠原智(村上虹郎)に、燐は隠していた秘密と感謝の気持ちを伝え、治療よりも学園生活を選び、念願のバンド演奏ができたことで思い残すことはないと語りました。燐の突然の告白に動揺した智は、とっさに秘めていた彼女への想いを伝えますが、それは彼女を傷つけただけでした。「何でそんなことを言うのよ…出てって…」それが彼女と交わした最後の会話。

 深い後悔に苛まれ、学校へも行かずに閉じこもってしまった智。しかし、そんな彼にある奇跡が起きます。雪の降る日、燐と出会った土手に佇む彼は、足を滑らせて転落、気がつくと夏の日に戻っていたのです。そこには燐が元気な顔で立っていました。「バンド組もう!」出会ったあの時と同じ言葉。最初は「バンドを始めなければ彼女を悲しませることはないのでは…」と拒絶する智でしたが、ひたむきに夢を追う燐のペースに巻き込まれていきます。メンバーを集め、“バンド活動禁止”という校則に立ち向かい…。燐の夢を叶えつつ、最後の一言だけは言わない。そう誓って同じ夏を繰り返そうとする智ですが、少しずつ過去とは違う出来事が起きるようになり…。

 主人公で語り手でもある智を演じるのは村上虹郎。最近注目の若手俳優で、前作『武曲 MUKOKU』でもそうですが、力んだ演技を見せるわけでもないのに感情のほとばしりを伝えてくれる自然な存在感が光っています。今回はギターの腕前も披露(ご存知ない方のために書きますが、彼の父は俳優の村上淳、母は歌手のUAです)。ヒロインの燐に扮したのはガールズバンド「たんこぶちん」のVo.&Gt.担当の吉田円佳。その歌声は圧倒的で、パワフルなライブパフォーマンスはさすが本物。劇中歌の楽曲も「たんこぶちん」によるもの。バンドの他のメンバーは、ドラムの花京院姫子にnon-noモデルの金城茉奈、ベースの石田六郎に『青空エール』『ストロボ・エッジ』など数多くの青春映画に出演している山田裕貴。金城と山田は初挑戦のドラムとベースを猛特訓してライブシーンに挑戦しています。智の幼馴染みの生徒会長・菅野瑛子役はAKB48の加藤玲奈。智と燐の二人で始めたバンドがメンバーを集め、次第に絆を深めていく姿が快調なテンポで描かれ、これぞ青春映画、という魅力にあふれています。

夏合宿の様子などに青春の香りが漂う
夏合宿の様子などに青春の香りが漂う

 原作は赤城大空のライトノベル、やはり文字だけよりも実際に音楽が流れた方が臨場感がある分、より楽しめる作品になっていると思います。タイムスリップの繰り返しものだと「今度こそ想いを成就させる」というテーマが多い中にあって、「自分の想いを隠し続けようとする」のが逆に新鮮。何も目標を持っていなかった智が、音楽の力によって前向きに生きていく決意をするくだりは感動的で、彼の再生のドラマとしての側面も持っているのです。

(『二度めの夏、二度と会えない君』は9月1日から公開)

(c)赤城大空・小学館/ 『二度めの夏、二度と会えない君』パートナーズ

同じようにタイムスリップ、恋愛、バンドといったテーマを描く『君と100回目の恋』のレビューはこちら