ヒーローはまだまだ未熟な15歳。青春映画としての魅力も持った快作『スパイダーマン:ホームカミング』

 今世紀に入って3度目のスタートを切ったスパイダーマン映画ですが、トム・ホランド扮するスパイダーマン/ピーター・パーカーのお披露目は、昨年の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で済んでいます。スパイダーマン映画の製作権を持っているのはソニー・ピクチャーズ、しかしディズニー/マーベルが展開するMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)との提携が行なわれたことによって、今後は映画会社の枠を超えてアベンジャーズとの共演が可能になったのです。したがって本作『スパイダーマン:ホームカミング』にもアイアンマン/トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)が登場します(キャプテン・アメリカも映像で出演)。

 さて、今回のスパイダーマンの特徴は、まだ15歳と若く設定されたことにより、学生としての面がクローズアップされていること。ヒーローとしては駆け出しのため、まだまだ自覚に欠けるところがあり、せっかくトニーにもらった高性能スパイダーマン・スーツも使いこなせていません。失敗を繰り返すピーターの姿を描くことで、アメコミ・ヒーロー映画であるのと同時に、優れた青春映画の側面も持っているのです。

 冒頭、ピーターがスパイダーマン・スーツを手にするまで、そして『シビル・ウォー』でのベルリンの空港での戦いに参戦するくだりが描かれますが、これがなんとピーター自身のスマホの自撮り映像という設定に。しかも、憧れのヒーローたちと同じ舞台で戦えるということで子供らしい大はしゃぎを見せているのです。今までのスパイダーマンが「大いなる力には大きな責任が伴う」という宿命的な暗さを感じさせていたのとは好対照。「ヒーロー志望の15歳」という等身大の少年の部分が強調されていて、若い(あるいはかつて若かった)観客の共感を呼ぶように作られているのですね。高望みから背伸びをして、失敗し、でも挫けずに前を向く。そんな青春真っただ中のピーターのひたむきな姿に胸が熱くなります。

 とある事故でクモのような超能力を持ってしまったものの(そのエピソードは今回の映画では描かれていません。それが映画のテンポを良くしている原因のひとつでもあります)、素顔のピーター自身はいたって普通の、どこにでもいる高校生。同じクラブの美少女に恋もしていますし、学業とヒーロー活動の両立に悩んだりもします。さらに今回は、親友のネッドにスパイダーマンであることを知られてしまうという今までにない展開もあって、二人のやりとりでも笑わせてくれるのです。

 もちろん、アクション映画としての見どころもいっぱい。すでに予告編やTVスポットなどでご覧になっている方も多いでしょうが、スタテン島へ渡るフェリーが真っ二つにされ、それをスパイダーマンが必死でつなぎとめようとするシーンなどは、実際にかなりの大きさのモデルを作り、本物の水を何万トンも流し込んで迫力のシーンに仕上げています。ワシントンDCのモニュメントを舞台にした高層階での救出シーンも緊迫感たっぷり。そして、今回のヴィランである、巨大な翼を持った怪人バルチャー(マイケル・キートン)との決戦はニューヨーク上空を飛ぶ飛行機の上。しかもこの時点では彼は高性能スパイダーマン・スーツを取りあげられていて、手作りの衣装(通称:ホームメイド・スーツ)着用で挑むのです!

 監督は『COP CAR/コップ・カー』で注目されたジョン・ワッツ。ミュージック・ビデオやCM出身で、これがまだ3本目の監督作という新鋭ですが、ユーモアとアクションを融合させた切れ味のいい演出ぶりを見せています。

(付記)

スパイダーマンの映画でお葬式のシーンがないのは、けっこう珍しかったりします。「どうもスパイダーマン映画は暗くて苦手…」という方にも、今回の新作はおススメしたいのです。

(『スパイダーマン:ホームカミング』は8月11日から公開)

(c)Marvel Studios 2017. (c)2017 CTMG. All Rights Reserved.

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』のレビューはこちらにあります