日本のアニメ『鋼鉄ジーグ』をモチーフにした、熱い魂のイタリア発スーパーヒーロー映画が登場!

『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』

邦題が『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』。思いっきり原文直訳みたいですが、これ日本で訳したものではなく、イタリア語の原題とともに本編に併記されている正真正銘の原題でもあるのです。こんなところにも日本カルチャーへの製作陣の“愛”を感じさせる作品。

永井豪・安田達矢原作のアニメ『鋼鉄ジーグ』は75年に日本で放送開始、79年にはイタリアでも放送されて大人気だったのです(同様に『UFOロボ グレンダイザー』も『ゴルドラック』の名前で欧州で人気を集めていました)。少年時代から日本のアニメの大ファンだったガブリエーレ・マイネッティ監督が、そのスピリットを注ぎ込んだヒーロー誕生編がこの映画です。イタリアのアカデミー賞と呼ばれるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で16部門にノミネートされ、7部門で受賞という快挙を達成。

舞台は、テロの脅威にさらされている現代のローマ郊外。チンピラのエンツォ(クラウディオ・サンタマリア)は、追われて川に逃げ込んだ時に放射性廃棄物の詰まったドラム缶に接触してしまいます。体調を崩し、手が真っ黒に染まったエンツォ。だがそれと引き換えに、彼は超人的なパワーと頑強な肉体を手に入れたのです。

とはいえ、しょせんはチンピラのエンツォ。そのパワーを利用してやることといったら、ATMを破壊して現金を盗むなどのせこい行動。しかし、そんな彼は、世話になっていた“オヤジ”を殺され、その娘アレッシア(イレニア・バストレッリ)を助けたことから、いささか調子が狂ってきます。片時もDVDプレイヤーを手放さない彼女は『鋼鉄ジーグ』の熱烈なファンで、現実とアニメの世界の区別がつかなくなっており、怪力を発揮するエンツォのことをアニメの主人公・司馬宙と同一視してしまったのです。ひたむきに彼を慕うアレッシアの期待に応えるため、エンツォは生き方を変えていかざるを得なくなっていき…。

映画は無口で不愛想なエンツォの不器用さを、これでもかと描いていきます。友達はいず、楽しみはヨーグルトを食べながらアダルトビデオを見るぐらい。アレッシアに対しても優しく接することができず、強引に迫り彼女に悲しい思いをさせてしまうのです。こんなダメ男が、いかにしてヒーローとしての自分、少年の日の純粋な心に目覚めていくのかというのが感動のポイント。人間の弱さやもろさを徹底してえぐり出していくのがイタリア映画的でもあるのです。

そしてまた、悪役の残虐さもマカロニ・ウエスタン以来の伝統。今回の敵となるジンガロ(ルカ・マリネッリ)は冷酷非情で傍若無人、しかも目立ちたがりのナルシスト。エンツォが強力な力をふるう場面がネットにアップされ話題になると、自分も同じ力を手に入れようと企み、虐殺現場の動画をネットにアップしようとするのですから狂っています。この、ちょっとバットマンのジョーカーを彷彿とさせるキャラをマリネッリが大熱演。なんとイタリアではこの演技で注目のスターになり、主演作が続々決定の人気者になったそうです。

同じヒーロー映画といってもハリウッドのように潤沢な資金を投入し、CGを多用して作った作品とは違いますが、一点集中型でクライマックス近辺にVFXを集中させたので、アクション映画としての見ごたえも十分。しかし、何と言ってもこの映画の真の見どころは“心意気”なのです。根は純情なダメ男が、自分を信じてくれた女性のために孤独な正義の闘いを決意する。決してスマートでもスタイリッシュでもないけれど、そこに流れている熱い想いは間違いなくスーパーヒーローのものなのですから。

(付記)

エンドクレジットに流れる歌はアニメ『鋼鉄ジーグ』の主題歌をアレンジしたもの。歌っているのは主演俳優のサンタマリアです。その哀愁に満ちた曲調が、またたまらないのです。

(『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』は5月20日から公開)

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