”ブルース・リーの師匠”の戦いを描くシリーズ第3弾は夫婦の愛の物語でもあった『イップ・マン 継承』

“ブルース・リーの師匠”として知られる“詠春拳”の達人イップ・マンにドニー・イェン(『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』や『トリプルX:再起動』でその知名度は世界的になりました)が扮したシリーズ3作目。「あれ? まだ3本目だっけ…」と思ってしまうのは、ドニーが最初にイップ・マンに扮した『イップ・マン 序章』(08)が中国で大ヒットしたことを受けて彼以外が主演する“イップ・マン映画”やTVシリーズが作られたからで、ドニーのシリーズとしては『イップ・マン 葉問』(10)以来、6年ぶりの新作になります。ずいぶんブランクがありますが、劇中でも前作から10年が経過した設定なので違和感はありません。

1959年。イップ・マンは勉学のために長男を中国本土に渡らせ、妻のウィンシン(リン・ホン)、小学生の次男チンと共に香港に住み、詠春拳の普及に努めていました。弟子入り志願者の中にはブルース・リー(『少林サッカー』でブルース・リーにそっくりなゴールキーパーを演じたチャン・クォックワンが、ここでもそっくりさんぶりを見せます)もいます。彼の武術家としての名声は高まっていましたが、忙しさにかまけて妻との約束を忘れがち。そこがウィンシンにとっては不満でした。

その頃、好景気に沸く香港は利権を求める人々の無法地帯と化していて、外国人の不動産王フランク(ボクシングの元世界チャンピオン、マイク・タイソン!)が土地の奪取を目論んで、イップ・マンの息子が通う小学校に立ち退きを迫っていました。フランクの部下のサン(パトリック・タム)は、様々に卑劣な手を使っていやがらせを行なってきます。それは次第に激化の一途をたどり…。

常に高潔であろうとし、理想を追い求めているイップ・マンの生き方は傍目には歯がゆく感じることもあり、実際に彼はそれゆえに窮地に追い込まれてしまいます。彼の前に立ちはだかるのは、サンとその手下たち、フランクが送り込んだ刺客のムエタイ戦士、そして優れたボクサーであるフランク自身。香港映画界ナンバーワン・アクション・スターであるドニーですから、こうしたバトル・シーンの迫力は折り紙付き。今作では『マトリックス』のユエン・ウーピンがアクション監督をつとめ、ドニーの身体能力をフルに活かした殺陣を見せてくれます。

そして、今作のもうひとつのドラマが、イップ・マンと同じ詠春拳の遣い手であるチョン(マックス・チャン)との因縁。同じ流派の達人でありながら、周囲から尊敬を集めるイップ・マンとは対照的な貧しいシングルファーザーの車引き。皮肉にも息子同士が同級生なのです。生活のためにアンダーグラウンドの賭けボクシングに武術の才能を発揮せざるを得ない不遇の天才は、サンの誘いに乗って悪の道に足を踏み入れ、やがてイップ・マンと対立していくことになります。

実際にマックス・チャンはドニー・イェンのスタントマンをつとめていたことがあったということで、役柄と現実がオーバーラップする“同門対決”が大きな見せ場。マックスはこの複雑な役柄とその体さばきが評判を呼んで、チョンを主人公にしたスピンオフが企画され、『パシフィック・リム』の続編にも出演が決定と、一躍注目の俳優になりました。

さらにこの映画、戦いだけでなく、イップ・マンと妻ウィンシンとの愛情物語の側面も持っているのです。宿命の対決を目前にして、突然の病に倒れてしまうウィンシン。今まで武術や、他人のことばかり考えて家庭を顧みなかったイップ・マンは苦悩します。自分は家族に甘えていたのではないか? いま、妻のためにできることは何だろう…。イップ・マンの朴訥で不器用な人柄がにじみ出る展開で、単なる戦いのドラマとは一線を画す要素がここにあります。真に“達人”であるということはどういうことなのか。アクションと感動の愛妻物語が合体した映画なのです。

(『イップ・マン 継承』は4月22日から公開)

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