史上最大級の原油流出事故の原因は人災だった! 実話の映画化『バーニング・オーシャン』

2010年4月20日に発生した、メキシコ湾での石油流出事故。490万バレル(78万キロリットル)もの原油が海に流出し、沿岸住民や自然破壊への影響は深刻でした。当時、報道写真で黒く汚れた油まみれの水鳥たちをご覧になった記憶のある方もいらっしゃるでしょう。この事故の原因になったのは、メキシコ湾沖の石油採掘施設ディープウォーター・ホライゾンで起きた火災でした。11名の作業員の尊い人命を奪ったこの火災、じつは明らかな人災だったのです。

その日の朝、電気技師マイク(マーク・ウォールバーグ)は3週間の勤務のため、ディープウォーター・ホライゾンに降り立ちます。しかし現場ではマイクの上司で施設主任のジミー(カート・ラッセル)と、彼らの雇い主である石油会社BP社の管理職社員ヴィドリン(ジョン・マルコヴィッチ)らが激しく対立していました。工期の遅れに焦るヴィドリンは、重要な安全確認テストを省略して作業を開始するよう強要してきたのです(当初51日で終わる予定の作業が6週間も延びていて、1日延長するごとに50万ドルの追加予算がかかる。ヴィドリンも上司から叱責されていたのは想像に難くないです…)。彼に押し切られる形で迎えた掘削作業の最終段階。だが、案の定大量の原油が漏れ出す緊急事態が発生。噴出したガスや油がエンジン室に引火し、大爆発が起こってしまいます。事故当時は自室にいて妻のフェリシア(ケイト・ハドソン)とスカイプで会話していたマイクは、爆発で埋もれた瓦礫の山の中からはい出し、重傷を負って動けない仲間を救助しようとしますが、あたり一面は火の海で、脱出可能なタイムリミットも迫っていました…。

この映画は事故後、ニューヨークタイムズの記者たちが、生存者への克明なインタビューを行なって作り上げた記事に基づいています。あの時、何があったのか、人々はどのように考え、どう行動したのかを、リアルに描こうとしたのです。そのため、必要以上にCGに頼ることなく、ディープウォーター・ホライゾンの精密なセットを作り上げ、複雑な内部構造をも再現。本物の質感が迫ってきます。観客もまたディープウォーター・ホライゾンの中へと入り込み、そこで驚異の体験をすることになるのです。

映画の前半は平穏な日常から“その時”に向かってのカウントダウン。何が起きるかは観客にはわかっているわけですから、不可避なカタストロフィへの伏線や予兆がいっぱい。さまざまなフラグが立てられていくわけです。このあたりの不穏な空気の流れ方は緊迫感にあふれています。そして、いざ火災が発生してからは災害パニック映画としてのスペクタクルな見どころのつるべ打ちです。爆風で吹き飛ばされ、炎に包まれ、砕けたガラスに傷つけられる作業員たち。巧みなカメラワークで、この大惨事の中にあって、「ひとりでも多くの仲間を救いたい」「生きて家族のもとへ帰りたい」という人々の熱い想いが伝わってくるのです。

監督はピーター・バーグ。主演のマーク・ウォールバーグとはやはり実話ベースの『ローン・サバイバー』でも組んだ経験があり、実録ならではの臨場感あふれる演出に特色がある監督です(エンタメに軸を置いた『ハンコック』や『バトルシップ』はやや畑違いの仕事だったのかも…)。本作に続いてマークとは、まだ記憶に新しいボストン・マラソンの爆弾テロ事件を描いた『パトリオット・デイ』(6月9日日本公開)でもタッグを組んでいて、こちらも見ごたえのある作品に仕上がっています。

(『バーニング・オーシャン』は4月21日から公開)

(c)2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

この監督主演コンビの新作『パトリオット・デイ』のレビューはこちら