もしもスマホの中に隠されている秘密が公開されてしまったら、人間関係はどうなる? 『おとなの事情』

いかにもイタリア映画らしい、セックスをからめたコメディです。まるで一幕ものの舞台劇を見ているようで、先が読めないストーリー展開に引き込まれていきました。イタリアのアカデミー賞と言われるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で作品・脚本賞に輝いたのも納得の出来。

ある夜、美容整形外科医のロッコと心理カウンセラーのエヴァ夫妻の高級アパルトマンに、友人たちが集まってホームパーティが開かれます。タクシー運転手のコジモと獣医のビアンカは新婚カップル。レレとカルロッタは結婚17年目で子供も二人いますが夫婦仲には問題ありそう。男たちはみな幼馴染みの親友で、ここにはもう一組、臨時教員のペッペが婚約者を連れて来るはずでしたが、相手が急病ということで、ペッペ一人だけが参加。かくして男女7人による食事会が始まりました。他愛もない会話の中で、携帯電話が原因で浮気が発覚し破局した知人の話が出たことから、エヴァがあるゲームを提案します。「私たちにはお互いに秘密なんかないはず。だからこのパーティの間にかかってきた電話やメールの中身は全員でチェックしあうことにしない?」少し戸惑いながらも、全員が同意。しかし、それがこの夜の大混乱の始まりでした…。

きっかけはレレが独身のペッペに“同型のスマホを使っているから、今晩だけ交換してほしい”と頼んだこと。実はレレには愛人がいて、夜の10時になると秘密の写真が送られてくることになっていたのです。なんとかそれでこの場をごまかそうと考えたレレ。うまくいったかに見えたのですが、今度は彼が手にするペッペの携帯に意外なメールが届き、逆にレレが窮地に陥ることに。さらに他のメンバーの携帯に次々と入る連絡が、それぞれに疑心暗鬼を生み出していきます。他人の不幸を笑っていたら、いつしかそれが自分の身に降りかかってしまうという、とんでもない事態の連続。果たして彼らは信頼と愛情を保ち続けることができるのか?

一見、幸せに見える夫婦とその友人たち。しかし、誰にも人に言えない秘密があり、隠しておきたい性癖もあります。それが一時に皆に知られてしまったら? スマートフォンという便利なツールはまた、持主の秘密がつまったブラックボックスでもあり、その中身をオープンにすることは、予想外の修羅場を展開することになってしまうのです。

次々と明らかになる事実とそれに対する言い訳の末、どんどん気まずくなっていく夫婦や友人関係。冒頭とラストの数シーンをのぞき、ほとんどがアパルトマンの中で展開する会話劇は、実際に家を借りて、6週間にわたって夜間撮影が行なわれたもので、台本の順番に撮影されたことによって、登場人物の心理の変化などがリアルに描かれています。脚本家も5人が参加。それぞれがアイディアを出し合い、セリフのニュアンスやテンポにも気を遣って書き上げ、リハーサルも入念に行なわれたそうで、自然に見える発言にもアドリブはほとんどなく、すべて台本通りに演じられているのだとか。

セックスにまつわる会話から人間関係がもつれていくというイタリアン・コメディの伝統を引き継ぎながらも、そこにスマホという現代的なモチーフを持ち込むことによって新鮮さを出した作品。たかが数時間のディナ―なのに、その間にも次々と入る着信やメールは、スマホを使って他人とコミュニケーションをとり続けることが当たり前になった(あるいは、そうしなければならないと思わされている)現代人を皮肉っているかのようです。

笑いとサスペンスが交錯する中、修復不可能なまでになってしまった人間関係はいったいどうなるのか? あっと驚くラストの落とし込み方にも感心させられました。監督(兼共同脚本)はCM界出身のパオロ・ジェノヴェーゼ。さて、あなたは親しい人にスマホの中の情報をすべて公開できますか? ちょっと(かなり?)考えさせられたのです。

(付記)

この映画はイタリア本国で大ヒットし、さっそくスペイン版のリメイクが作られました。世界中からオファーが殺到しているとのことなので、さらなるリメイクもあり得るかも。それだけ普遍的なテーマを扱っていると言えるのです。

(『おとなの事情』は3月18日から公開)

(c)Medusa Film 2015