『ヒトラーの忘れもの』大戦が終わり、取り残されたのは無数の地雷と少年たちだった…

1945年、第2次世界大戦が終了し、デンマークは5年に及ぶナチス・ドイツの占領から解放されました。冒頭は追い出される形で徒歩で帰国の途につくドイツの敗残兵たちの姿。怒りに燃えるデンマーク兵がそれを監視し、ささいなことで鉄拳制裁を加えたりします。しかし、たとえ殴られて血まみれになっても、彼らはまだ帰国できるだけ幸せだったのです。ドイツ兵の中には帰国すら許されず、とてつもない過酷な任務を強要された者たちがいたのですから。

占領時代にナチスは、連合軍の上陸を防ぐために海岸線に大量の地雷を敷設しました。その数はなんと200万個以上。それを除去するには、ひとつひとつ手作業で掘りだし、信管を取り外さなければなりません。そんな気の遠くなるような、しかも死と隣り合わせの危険な任務を命じられたのは、捕虜となり異国に取り残されていたドイツ軍捕虜。しかもその大半は15歳から18歳の少年兵だったのです…。

これは、デンマークの戦後史の中でも、人々が目を背けてきた事実をもとにした映画です。ナチスが行なった悪行を、捕虜の少年兵たちに負わせる形で、彼らを死地に赴かせたのですから(実際にその半数近くが死亡、または重傷を負っています)。

映画は地雷の除去の様子を丹念に描き、いつ爆発するかわからないサスペンスを盛り上げていきます。広大な浜辺に這いつくばり、少しずつ進みながら手探りで地雷を探り当て、慎重に信管を外していく。作業の手順がずれれば、あるいは手元が少し狂っただけでも地雷は容赦なく爆発し、少年たちの命を奪っていきます。作業工程に馴れてきた頃には、別のトラップが仕掛けられた地雷が出現し、油断した少年兵を吹き飛ばします。そんな、いつ果てるともわからない過酷な日々。死への恐怖におびえながら、あるいは母の名を呼びながら若い命を絶たれる少年兵たちの姿には心が痛みます。美しく青い空や海、白い砂浜とこの状況とのコントラストが、事態の悲惨さをより際立たせていくようです。

それを監視し、監督するのはデンマーク軍の古参兵・ラスムスン軍曹(ローラン・ムラ)。11名の少年兵を預けられた軍曹は、最初はナチスに対する憎しみから少年たちに容赦ない暴力と罵声を浴びせかけますが、飢えや体調不良に苦しみながらも、絶望的な任務に打ち込む彼らの姿に少しずつ心を開いていきます。しかし、そんな彼らには、さらに過酷な運命が待っていたのでした…。

ナチスが占領地に対して行なった行為は決して許されるものではありません、しかし、だからといってその憎しみを少年たちにぶつけることは果たして善なのか? 戦勝国ならば敗戦国の兵士に何をしてもいいのか? そんな重たい命題を映画は問いかけてきます。憎悪と贖罪の物語です。人は憎むべき相手をどうすれば許すことができるのか…。その先に希望を見出すにはどうすればいいのか?

ラスムスン軍曹役のムラが、セリフの少ない中で武骨な軍人役を好演しています。冒頭でドイツ兵を殴りつけているのも彼なのですが、そんな男が少年たちと触れ合うことでどう変わっていったのか。そこにこそ、この映画の製作者たちが語りたかったテーマがあるのでしょう。自らの国の人々が行なった、“黒歴史”とも呼べる題材に正面から向き合った製作陣の姿勢には拍手を贈りたいと思います。少年兵たちに扮した俳優たちも(中にはこれが演技初体験の者もいます)それぞれが個性を発揮して熱演。リーダー格のセバスチャンに扮したルイス・ホフマンは軍曹役のムラと共に、昨年の東京国際映画祭で最優秀男優賞に輝きました。

(付記)

タイトルにあるヒトラーは映画の中には登場しません。映画祭での上映題名『地雷と少年兵』の方が映画の内容に即しているのかもしれませんね。

(『ヒトラーの忘れもの』は12月17日から公開)

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