ネコ好きは必見! 名優たちがコミカル演技に全力投球のファミリー・コメディ『メン・イン・キャット』

原題は「猫は九つの生を持つ」ということわざにちなんだ(映画の内容にも関わってくる)『NINE LIVES』ですが、監督が『メン・イン・ブラック』シリーズのバリー・ゾネンフェルドということもあって、邦題は『メン・イン・キャット』ということになりました。タイトル通り、人間の魂が猫の中に入ってしまう…というコメディです。

そんな“猫になってしまった男”の役を演じるのが、『ユージュアル・サスペクツ』と『アメリカン・ビューティー』で2度のアカデミー賞に輝いた名優ケヴィン・スペイシー。冒頭は自己顕示欲が強く仕事一筋のワンマン社長の姿をお得意の傲岸不遜な演技で見せ、猫になってしまってからは声の演技で笑わせてくれます。一見カワイイ猫、しかしその中身はおっさんというギャップが楽しいのです。見るからに強面のスペイシーですが、実は大のコメディ好き。この映画のオファーもノリノリで快諾したのです。彼の“声”が重要なポイントなので、日本語吹替え版は作らず字幕版のみで上映されるというのもうれしい。変なお笑い芸人とかに吹き替えられたら興ざめですからね…。

一代で巨大企業を立ち上げたトム・ブランド(スペイシー)は超ワンマン社長。「北米一高いビルを建てる」というバカな目標のため、他人の意見も聞かず、家族との時間も犠牲にして仕事に突き進んでいます。そんな中、妻のララ(ジェニファー・ガーナー)から娘のレベッカ(マリーナ・ワイズマン)の誕生日が明日だと聞かされたトムは、彼女が欲しがっていたペットの猫を買うことに。トムが立ち寄ったのが怪しげな店主パーキンス(クリストファー・ウォーケン)が経営するペットショップ。そこで“Mr.もこもこパンツ”と名付けられた猫を買ったトムでしたが、家に帰る前に事故に遭い、しかも彼に恨みを持つ社員に見捨てられ、猫と共にビルの屋上から転落してしまいます。

意識を取り戻した彼が見たのは、担架で運ばれていく自分自身の姿。そして自分が猫になってしまったという衝撃の事実でした。なんとか自分が猫になってしまったことを家族に告げようと悪戦苦闘するトム。病院で昏睡状態の彼の肉体が死んでしまえば、永遠に猫の姿から戻ることができなくなるのです。しかもその間に、彼の会社は株式を公開され乗っ取られようとしていました…。

見た目キュートな猫がおっさんの声で悪態をつきまくり、人間たちを振り回して大暴れするのが楽しいコメディ。しかし、ちゃんと家族の愛情を落としどころにしているあたり、安心して誰にでも勧められるウェルメイドな作品です。成功者であるブランド家の豪華な内装や、離婚した前妻とその娘の描き方など、アメリカの富裕層に対する風刺もちらり。主人公である猫の“Mr.もこもこパンツ”(ロシア産のサイベリアンフォレストキャットという珍しい長毛種)は一部CGも使われていますが、6匹もの猫がそれぞれの得意分野に応じて適材適所で演じ分け、見事な名演技を見せてくれます。演技指導を担当したアニマル・トレイナーは『メン・イン・ブラック』をはじめとする数々の映画を手がけたベテランのクリスティ・ミーレとジャニーン・L・アイネスのコンビ。主役以外にもペットショップの場面で数多くの猫が登場しますので猫好きには見逃せない作品です。「猫の目から見た世界」を表現する美術やカメラワークも楽しい。

そして、やはりオスカー俳優(『ディア・ハンター』)であるクリストファー・ウォーケンの怪演も光ります。キャット・ウィスパラー(猫と話ができるトレイナー)を名乗る謎めいたペットショップの主人。初登場時から見るからに怪しげな雰囲気をぷんぷんさせていて、実は猫好きだというウォーケンが楽しんで演じているのが伝わってくるのです。彼のペットショップには猫にまつわるレコードジャケットが飾ってあり、BGMも猫関係の歌(コースターズの「スリー・クール・キャッツ」が特に印象的)が流れる、というお遊びにもニヤリとさせられます。このあたりはゾネンフェルド監督のセンスなのでしょうね。

(『メン・イン・キャッツ』は11月25日から公開)

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