R・リンクレイター監督の新作『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』青春はいつだって限りなく輝いている

『6才のボクが、大人になるまで。』で2014年の映画賞を席捲したリチャード・リンクレイター監督の新作。正式タイトルは『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』で、このタイトルはヴァン・ヘイレンが1980年に発表した3枚目のアルバム「暗黒の掟」に収録されている同名曲(邦題「エブリバディ」)からとられたもの。80年9月、南東テキサス州立大学に野球推薦で入学することになった青年の、新学期スタートまでの3日と15時間を描いた作品です。

 期待と不安を胸にテキサスにやって来た主人公ジェイク(ブレイク・ジェナ―)は、お気に入りのレコードを抱えて野球部の寮に入ります。そこで待っていたのは個性あふれる騒々しいチームメイトや先輩たち。さっそく女子寮に女の子の品定めに連れていかれたジェイクは、やはり新入生で演劇専攻のビバリー(ゾーイ・ドゥイッチ)に一目惚れ。夜は地元のディスコやカントリー・バー、パンク・クラブで騒ぎまくり、昼間は野球の練習に打ち込む、嵐のような数日間が幕を開けます。野球はもちろん、パーティで騒ぐことや、お下劣なジョークにも常に全力投球、好きな曲は全員で大声で歌い、気になる女の子には猛アタック。大学生活のスタート直前という、子供と大人の狭間にある時代でしか味わえない青春を力いっぱい謳歌するのです。

 60年生まれのリンクレイター監督にとっては同世代の青春を描いた(彼自身も野球の奨学金で大学に進学しています)メモワールのようなもの。70年代末から80年にかけてのロックやディスコのヒット曲が次々と登場し、ノスタルジーを誘います。しかし、ただ昔を懐かしんで「あの頃は良かった…」と言っているだけの作品ではありません。ここには時代が違っても変わらない普遍の青春像が描かれているのです。まだ若く、自分が何をしたいのか、自分に何ができるのかわからない。物事の道理も、社会の仕組みもよくわかっていない。しかし、このひと時、未来は限りなく明るく、どこまでも開けているような感覚だけはある。そんな気分。この瞬間は決して永遠には続かないけれど、少なくとも今だけは色あせることなく輝いている。そんな感覚を見事にスクリーン上に再現しているのです。

 特にドラマチックなストーリー展開があるわけではなく、飲んで騒いで女の子を口説いているだけの映画と言えなくもないのですが、そんな内容にもかかわらず、約2時間の長さを退屈させずに楽しませてくれるのは、リンクレイター監督の演出の妙。有名俳優を使わず、全員オーディションで選ばれたという新人中心のキャスティング(これが演技初体験の人が何人もいます)が新鮮です。ちなみにヒロインにあたるビバリー役のゾーイ・ドゥイッチはハワード・ドゥイッチ監督と女優リー・トンプソン(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)の間に生まれた娘、学生の一人マクレイノルズ役のタイラー・ホークリンは『ロード・トゥ・パーディション』でトム・ハンクスの息子を演じた元子役です。このあたりには時の流れを痛感させられますね…。

(『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』は11月5日から公開)

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