新しい血の導入によって、伝統あるSFシリーズが快作アクションに新生!『スター・トレックBEYOND』

長く続いたシリーズ映画というのは「いちいち設定やキャラクターの説明をする必要がなく、すぐにその世界に入っていける」という利点がある一方で、「前の方の作品を観ていないなど、途中参加だと敷居が高くなる」という欠点も持っています。特にこの『スター・トレック』シリーズのように、リブート版が始まったのが2009年とはいえ、そもそものオリジナルのTVシリーズに遡れば1966年スタートという50年もの歴史のある作品の場合、「どうせ熱狂的ファンやマニア向けでしょ」と思われてしまうことも多いのです。

しかし、そんな欠点はこの『スター・トレックBEYOND』には当てはまりません。いや、むしろシリーズ初体験の人にこそぜひ観ていただきたいSFアクションの快作なのです。

物語は未知の宇宙を探索するという5年間の任務についたエンタープライズ号のクルーが3年目を迎えたところから始まります。平和な宇宙基地ヨークタウンに駐留したカーク艦長(クリス・パイン)たちは、未確認惑星に不時着したという宇宙船の救助要請を受けます。しかしそこに向かったエンタープライズは謎の異星人クラール(イドリス・エルバ)に率いられた無数の攻撃機に襲撃され、艦は制御不能になり大破。クルーも散り散りになってしまいます。いったいこの星で何が起こっているのか? クラールの目的は? この星に暮らす異星人の女戦士ジェイラ(ソフィア・ブテラ)と出会った彼らは決死の反撃を開始します。

まずポイントの第1は、監督が過去2作を担当したJ・J・エイブラムズから『ワイルド・スピード』シリーズのジャスティン・リンに変わったこと。J・Jのプロデューサーとしての手腕は認めますが、個人的な感想では監督としての演出力に不安あり(『M:i:3』『スーパーエイト』『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』も含め)でしたので、今回の布陣は大歓迎。かつてないスピード感にあふれたダイナミックなアクション・シーンが楽しめます。画面構成もさることながら、音楽の使い方も抜群で、あるシーンでは『超時空要塞マクロス』シリーズを思わせる、ロックとスペース・バトルの融合が見られますよ。

第2のポイントは脚本です。今回はスコッティ役で出演しているサイモン・ペグがダグ・ユングと共同で脚本を執筆。シリーズの大ファンである彼らの手によって、新たな息吹が吹きこまれているのです。クルーをバラバラにしたことによって、それぞれのキャラクターを立たせることに成功。今までのシリーズを見ていなくても、彼らがどんな性格でどういう絆で結ばれているのかがはっきり伝わってきます。カークとチェコフ(アントン・イェルチン)、スポック(ザッカリー・クイント)とマッコイ(カール・アーバン)、ウフーラ(ゾーイ・サルダナ)とスールー(ジョン・チョウ)を組み合わせ、ジェイラと遭遇する役割をスコッティに持ってくるあたりの配置も絶妙。クリンゴンやロミュランといった仇敵、あるいは旧シリーズからの因縁を持ってくることなく、まったく新しい敵を創造していますので、初めての観客でも問題なく受け入れられるのです。未知の惑星上で展開する冒険という点ではTV時代の『宇宙大作戦』の現代版というテイストもあり、このあたりにも作品の魅力をわかっている脚本家の力を感じます。こちらは逆に、劇場版しか知らない世代の方がより新鮮に楽しめるかも。

さらに、古くからのファンに配慮した部分もちゃんと含まれているのが嬉しいところ。今回の映画の撮影前に、長年ミスター・スポックを演じ、新シリーズの前2作にもスポック大使としてゲスト出演していたレナード・ニモイが死去。その功績を称え、死を惜しむ描写が登場するのです。彼の遺品の中にあったものとは…。ここで涙するオールド・ファンは多いはず。またこの映画、公開直前に不慮の事故によって若くして帰らぬ人になってしまったアントン・イェルチンにも捧げられています。今後もシリーズは続くのですが、別の俳優がチェコフを演じたり彼が死んだ設定にしたりするのではなく、チェコフの登場しないストーリーを作って行くのだそうです。

(付記)

IMAXで観ると、宇宙船の質感などがより素晴らしく感じられます。

(『スター・トレックBEYOND』は10月21日から公開)

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