マット・デイモンのジェイソン・ボーンが帰ってきた! 新たなる事実も発覚し、シリーズには新展開も…

すべては主演のマット・デイモンとポール・グリーングラス監督の信頼関係から始まりました。シリーズ2作目の『ボーン・スプレマシー』から参加したグリーングラス監督は、続く3作目『ボーン・アルティメイタム』を撮り終えると、この2作を通して絶大なる信頼と友情で結ばれたマット・デイモンと再び組んで『グリーン・ゾーン』を監督。ボーン・シリーズは三部作で一応完結したはずでしたが、スタジオはさらなる続編の製作を企画し、脚本家としてシリーズ全作に関わってきたトニー・ギルロイに監督させることにしました。ところが、これにデイモンが異を唱えます。「グリーングラス監督でなければ、続編には出ない」と。こうしてシリーズ4作目はタイトルこそ『ボーン・レガシー』でしたが、ジェイソン・ボーン不在のままストーリーが展開、実際に活躍するのはボーンの元同僚にあたるアーロン・クロスという外伝的な作品になったのです。

そして今年、デイモンとグリーングラスの両者が再び組むことによって、ジェイソン・ボーンが9年ぶりに復活を遂げました。黄金タッグによる真の“シリーズ4作目”の登場です。タイトルもシンプルに『ジェイソン・ボーン』。

CIAの監視網からボーンが完全に姿を消してから数年。彼はギリシアの国境地帯に身を潜め、地下格闘技のような場所で戦いながら暮らしていました。そんな彼に、元CIAの職員で彼とは深い因縁があるニッキー(ジュリア・スタイルズ)が接触を試みるところから物語は再び動き始めます。今は国際的ハッカー・グループに身を置いているニッキーはCIAのサーバーをハッキング、ある最高機密を入手したのです。そこにはボーンや“トレッドストーン計画(洗脳により完璧な暗殺者を作り上げるシステム)”に関する新事実も含まれていました。だがニッキーの動きはすぐにCIA本部の知るところになります。長官のデューイ(トミー・リー・ジョーンズ)はただちに殺し屋(ヴァンサン・カッセル)を差し向けますが、彼の部下で野心的な女性エージェント・リー(アリシア・ヴィキャンデル)には別の思惑がありました。彼女はボーンを抹殺するのではなく、再びCIAに引き入れようと考えていたのです…。

かくして物語はギリシアを皮切りに(冒頭のハッキング・シーンの設定はアイスランドのレイキャビクですが)、ベルリン、ロンドン、ラスベガスと舞台を変え、ボーンはCIAと激闘を展開していくことになります。果たして彼の過去にはどんな秘密が隠されていたのか? そしてデューイが密かに進めている極秘計画とは…?

最大の魅力はグリーングラス監督らしいスピード感あふれる演出です。彼の登場によってアクション映画の歴史が変わったと言っても過言ではない独特のカメラワークと目まぐるしい高速カット割り。手持ちカメラを駆使した不安定な画面がライブ感をあおり、時にはスタントマンにカメラを持たせ、被写体を追ってジャンプさせたりもしています。アクション・シーンもカーチェイスも、CGに頼ることなく生身の人間が行なうことを重視。デイモン自身も「格闘シーンでスタントマンは使わない」と宣言し、ボクシングを中心にしたトレーニングとダイエットの日々を過ごしてから撮影に入りました。シリーズが始まった時に29歳だった彼もすでに45歳。体系維持と管理はかなり大変だったことでしょう。さらに今回のクライマックスのカーチェイス・シーンはラスベガスの中心部で常識破りの大ロケーションを敢行したもの。そのスケールはまさにシリーズ最大。

さらに、今回はボーンの過去に関する新事実が発覚。もともと“記憶喪失”がスタートラインになっているお話しですから、いくらでも新たな設定を付け加えることは可能なわけで、さらにニッキーがハッキングしたデータには“トレッドストーン”や“ブラックブライア”“アウトカム”(いずれも過去のシリーズに登場したCIAの極秘作戦のコード名)以外にもいくつかの作戦名が記されていたので、まだまだ新たなる展開が期待できそうです。

興味深いのは、CIAのデューイが進めている計画(陰謀と言った方がいいかも)が、つい先日に日本でも公開された別の映画のものと酷似している点。やはり情報化社会での国際的な陰謀となると、同じ発想に至ってしまうのでしょうか…。

今回のキーパーソンとなるのは、CIAエージェントのリー。『リリーのすべて』でアカデミー助演女優賞を獲得したばかりのアリシア・ヴィキャンデルが演じる彼女は、これまでのCIAメンバーとは異なり、ボーンを理解することによって彼を自分の陣営に取り込もうと考えます。上司のデューイとは違う思惑で動くわけで、これが物語をどう動かしていくのか。シリーズがこの後も続くとしたら再登場も期待できる、かなり魅力的なキャラクターとなっています。

(付記)

アーロン・クロス(ジェレミー・レナー)の方の続編の企画もまだ残っています。

(『ジェイソン・ボーン』は10月7日から公開)

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